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あの夜の相手は誰だったのだろう。
課長には本命がいる。いや、もしかしたら嘘かも知れない。
晴夫が忘れているのをいいことに別の人の存在があるように語ったのかもしれない。
加藤係長は午前様にならないように帰るという使命があったし、愛妻家だ。晴夫とそんなことになる気配もない。しかし、帰ったと嘘をついている可能性はあるのではないか。
一番、怪しいのは大悟と大山崎だ。
大悟は大山崎が帰ってくると思って鍵をかけずに帰ったはずだが、何故、先に帰ると連絡しなかったのか。連絡しようとして、大山崎の終電に乗るというメッセージのポップアップ通知を見たのではないか。
大山崎が戻ってこないと知ってそれで…。
いや、普段の大山崎の行動を考えると、返事がない時点で終電に間に合うように帰るのを諦めたのではないか。大悟もそう考えてもおかしくない。既読にならなければ大山崎が戻ってくると思って、大悟はあえてメッセージを見なかったのではないか。そして鍵を開けて帰った…。
朝、ドアは施錠されていて、鍵は郵便受けに落とし込んであった。
誰かが嘘をついている。そう考えると、高村が嘘をついていないとも限らない。
ゲンキは? 彼も二次会には一緒に居た。三次会にはいたか?
加藤はいたと言っていたが、カラオケから帰るときにもいただろうか。記憶がない。
西村元希。
元気活発。だからニックネームもゲンキ。背が低めで小動物系の可愛らしさがある。男だとわかっているのに時々、思わず抱きしめたくなる。
晴夫はもともと女性が恋愛対象である。高村の言葉をかりれば抱きたい人だ。西村を抱きたいと思うのは女として想像しているに過ぎない。
後ろに刺激がないとイケない体質になったのは瑠加との関係で、無理矢理開かれた性癖…。
いや、興味はもともとあったような気がする。
そんな特殊な、人に言えないようなプレイを最初は拒絶した。
受け入れたのは瑠加を好きだったから拒み切れなくなったというわけではない。瑠加に見させられたゲイビに興奮した流れだった。
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