7人の男あり

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「おかしいよね? なんでそんなことするの?」 「すみません。どうしても堪えられなくて…。赤の他人の部屋を勝手に…。僕の方が泥棒として通報されるだろうなともわかってました。それでこっそりお返ししようと思って…」  このお隣さんの神経はわからなかったが、相手がこいつではないとわかって本心はホッとしていた。  追及するのもばかばかしくなっていた。  男の続けた言葉にさらに呆れた。 「すみません。その、バイトに行く時間なので、その…。また後でお詫びに来ますので、一旦帰っても…」  こいつのことはもうどうでもいい。  来なくていいと言って玄関まで見送って、ふと思い出して、あの日、終電間際の時間に来た客が何を買ったか覚えているか聞いてみた。  他にどんな来客があったか、この神経質そうなお隣さんはよく覚えていた。  それを聞いて、晴夫は“犯人”が誰だかわかったと思った。  週末までの仕事が辛かった。  嘘をついている奴が、自分から名乗り出てくるのを待ったが、結局、なんの動きもなかった。  いつも通り。なぜいつも通りなのか、腹が立ちつつも、自分があの日のことを覚えていないと知って平静を装っているだけなのかもしれないとも思って気持ちを鎮めようとした。  何もなかったことにしよう。  そうも考えたが、どうしてもうやむやにしたくない自分がいた。   それで、お隣さんの証言からあたりをヤツにメッセージを送って呼び出した。  既読にならなかった。  メッセージに書いた時間になっても現れなかった。  内容を読まなくても晴夫からの連絡があったのだから、何のための呼び出しか気付かないはずもない。  最寄り駅の最終電車が出発する時間になった。そしてしばらくして呼び鈴が鳴った。
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