彼らの思い遣り

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 年下に告白されて困っていた辻谷に恋愛相談をされて、濱津の方が気持ちがわかるはずだと振ったのは溝田だった。  濱津は自分から恋愛をするタイプではなく、好きになられて、与えられる愛の大きさで相手に惹かれていく。  具体的に誰とは言わなかったが、部下に慕われて、それにすっかり甘えている濱津に、辻谷も気付いていた。 「溝田主任はこれで良かったんですか?」  高村に声をかけられて、溝田は苦笑いした。 「高村ちゃんは、いいの?」  鋭い高村は濱津がバレンタインに彼女と別れてから随分と心配していた。  溝田は少し、疑っていた。高村も濱津を好きなのではないかと。 「可愛い人ですよね。でも、私は男は恋愛対象になりませんから…」 「俺もアイツは恋愛対象にならないよ」 「ホントに? 男もイケるひとですよね?」  溝田は飲みかけたコーヒーで危うくむせそうになった。 「おいおい、俺は男とヤッたこと、ないぜ?」  濱津をホテルに誘ったことがあったが、もし濱津が怖気づかなくても、何もできなかっただろう。  それは、濱津が男だからではなく、仲のいい同期だからだ。 「アイツは可愛い弟みたいなもんさ。アイツが幸せそうならそれでいい」  高村の男には見えない綺麗な顔が狡そうな笑みで歪んだ。 「なんだその顔はよ。ったく、こんな話、デスクでするのはやめようぜ」 「はーい」
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