週末の夜

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 いつも通りの週明け。  いや、身体の感覚は違う。  何回やっただろうか。  昨日は朝のうちに帰したが、大山崎はずっと晴夫のアパートにいた。  腰が重い。  会社を辞めたくなければ、いつも通りにと言ったせいか、そもそも会社ではこの顔を貫くつもりなのか無表情な大山崎。 「濱津主任、一心堂への発注期限が明日なんですが…」  大山崎が控えめな声で呼びかけてきて、晴夫は身体が熱くなる。  終末のささやきを思い出して、奥が疼く。  わかりきった仕事のことで話しかけるなと腹が立つ。 「準備してあるんだろ。手順の確認ならもうしなくてもわかってんだろ。自信もってやれよ。一々甘えんな」  顔が赤くなったのを誰かに気付かれるのではないかとひやひやする。  奥が刺激を思い出して疼くが、切なくはない。  週末になれば、きっと大山崎はまたうちに来るだろう。  キスもしなかったし、向き合って繋がることもなかった。この隣の席のヤツとの関係を自分自身がしっかり自覚するのは嫌だと思ったからだ。  最中の大山崎の顔を知らないのも良い。  コイツだとわかっているけど、アパートでのコイツと一致しないのがいい。  今は無表情の大山崎が晴夫のアパートでは終始笑顔だった。  無邪気なその笑顔が大山崎の本性なのだ。  そんな大山崎の好意を都合よく利用するセフレにした。そのこと自体に悩むつもりはないが、みんなに報告することはできない。  いつも通りの仕事の流れの中で、ふと大山崎と目が合うと、ドキッとせずにはいられない。 『ハル、好き。大好き』  今にもそんな言葉が聞こえるのではないかと思ってしまう。  しかし無表情を決め込むのがお得意の大山崎がいつもののほほんとした空気を変えることはない。  それでも晴夫は大山崎の想いにすべてが侵食されていくような気がした。 「大山崎、これ、頼む」  そう声をかけてドキッとした。仕事の指示をする態で晴夫は大山崎に甘えているのだ。 『大山崎、頼む、イキたい。イケないんだ…』  晴夫は脳裏にあの夜の自分の声を聴いた。酔いに任せて自慰にふけっていたあの夜、大山崎に甘えたのだ。  大山崎に頼られているようでいて、晴夫の方が彼の存在に依存していたのだ。  いつものように感情のなさそうな顔で大山崎が書類を受け取ろうとするのを思わず、手を引いてしまった。  さすがに大山崎も怪訝そうに首を傾げた。 「濱津主任?」 「あ、すまん、頼む」        * * * * * * * * * *  金曜はそれぞれいったん帰宅する。それが日曜日にした約束。
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