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「好きな女は必ず手に入れる……海、諦めろ」
真剣な目で射るように見つめて言う。
「……分かった。もう、諦める……遥希が本当の姿を見せてくれたなら、私も……」
椅子を引き、テーブルから離れて、髪留めに手をかける。
「ん? 何を?」
「これが、本当の私の姿なの……」
髪留めを取り、髪をほぐし、伊達メガネを取ってテーブルに置く。
「っ! き、君は……」
「今まで黙っていてごめんなさい。あなたとまさか再会するなんて思ってなくて……避けていたのは、あんなふうに別れた後だったから、気まずくて…」
「……そうか……君だったのか。笑顔を見た時、似てると思った。それは間違いじゃなかったんだ」
「あの時はごめんなさい。失恋して寂しくて、あなたの温もりを感じたいと思った。でも、朝、目が覚めると間違いだったと思って、急いで部屋を出たの。あなたの事を彼を忘れる為に、利用してしまった……」
椅子から立ち上がって、彼に頭を下げる。
「本当にごめんなさい」
「…………ふっ、もういいよ」
彼が立ち上がって、私に近づき顔を上げさせる。
「俺は本社で月島 海に出会って、海を好きになった。海を好きなんだ」
「遥希……」
「海…」
私を抱き寄せ、強く抱き締める。
黙ったまま腕を引かれ、寝室へ入りベッドへ押し倒される。
「もう、隠さなくていい……そのままの海を見せろ」
唇を重ね早々と彼の舌を受け入れると、さっき食べたビーフシチューの味がした。
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