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激しく抱かれて、そのまま気を失った。
温かいものにくるまれて、目を覚ますと遥希の胸の中にいた。
(あのまま寝てしまったんだ……今、何時頃だろ……)
真っ暗で何も見えない。
彼の腕の中からそっと抜け出て、ベッドから出る。
寝室の壁にハンガーに吊るされた私のスーツ、ベッドの横にはシャツや下着が整えて置かれている。
(ふっ、意外ときっちりしてるんだよね……本当は……)
仕事でも彼は丁寧できちんとしていて、手を抜かない。
今日のビーフシチューでも分かる通り、時々口が悪く強引だけど、根は優しい。
でなきゃ、あんな美味しい物を作れない。
丁寧に丁寧にじっくり煮込む事がどれほど手間がかかるか、根気のいる事か、料理を見ればその人がどういう人か分かる。
下着を身につけ、寝室の入り口からダイニングテーブルの上を見ると、綺麗に片づけられていた。
「あっ、もう、片づけちゃったか……」
小さな声で呟く。
「ん? 食べたいなら、温めようか?」
彼の声が聞こえて振り向くと、ベッドから起き上がって微笑んでいた。
「遥希……起きてたの?」
「いや、海が腕の中にいなくて、目が覚めた。腹減ったのか? ふっ、食事の途中だったからな」
「うん……」
「海が眠ってしまったから、片づけたんだ。悪い、無理させたか?」
「ううん、大丈夫。でも、ビーフシチュー……食べたい……」
「ふふっ、いいよ。温めてやるから、ちょっと待ってて」
彼はベッドから出て下着を穿き、クローゼットの中から部屋着用の長袖Tシャツを2枚出し、1枚を私に渡す。
服を着てセットのズボンを穿き、リビングに向かって電気をつけ、キッチンに入る。
私は彼の部屋着を着て、ダイニングチェアに座った。
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