二、飛梅

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二、飛梅

   小さな階段を上って外へ出ると、プールサイドには机が一つ置いてあり、そこに女性が一人座って下を向いて何か書いている。。机の前には紙で『受付』と書かれていた。 「今日見学に来たんですけど」と亮太が尋ねると、女性はぱっと顔を上げて駿たち二人を交互に見比べた。まじまじと見られたと思ったら「よっしゃ!」と女性は男勝りなガッツポーズを決める。 「ようこそ水泳部へ。私は三年マネージャーの清原です。ここにクラスと名前を書いて奥に行ってね」  うれしそうに話す清原は目を輝かせて駿たちをまだ見つめている。もしかしたら、水泳部に見学に来た新入生は自分たちが初めてなのかもしれない。入る気もなくて見学に来たのが返って申し訳なく思えてくる。  先に書いている亮太の文字を清原はたどっている。 「君は水泳やっとったん?」 「はい、中学までクラブで」 「最高」 「あざす」  親指を立てグーサインを出しあう二人はすでに波長が合っているようだ。尚更記入するのが億劫になってきた駿に向かって満面の笑みを浮かべた亮太がペンを差し出してきた。渋々ペンを受け取って記入事項を書いていると当然亮太と同じ質問をされる。 「君は? 水泳やってたん」 「いや、僕は――」と言いかけたところで亮太が後ろから割り込んでくる。 「こいつも同じクラブでしてました! なかなかいいもの持ってますよ!」  肩を組んでくる亮太に憤怒を込めた目で睨むが、ひょうきんな亮太には全く届いてないようだった。駿は目の前で楽しそうに聞いている清原にすぐさま訂正を入れる。 「やっていたって言ってもほかのスポーツをしながらで試合にはほぼ出たことないです。あと今日は佐藤の付き添いできただけで、入る気はないの――」
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