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そこまで言って、書いている手が止まった。用紙には駿と亮太の上にも何人かの新入生の名前が書いてあり、駿は上から二番目の名前から目が離せなかった。まさかあの子が、いや同姓同名だってこの世にはいるはずだ。
固まっていることに気づいた清原が駿の見つめている名前を見て合点する。
「今年はすごいよ。この子が来てくれたけんね。私も名前見て驚いちゃったもん。奥にいるわ」
清原が指さした方を見たのと同時に、柔らかな風が吹いてプールに張っている水に波紋が走る。
その風の先に彼女はいた。肩にかかった茶色い髪が揺れて彼女は髪を耳にかける。記憶の中にあった彼女とは少し雰囲気が違っていた。六年も経っているのだから仕方がない。
それなのに、ずっと会っていなかったのに、駿は彼女が誰なのかわかってしまった。
「……市倉、栞」
呟いた声は風が一瞬にして連れ去ってしまい、もちろんそうでなくとも栞に届くはずがなかった。栞はこちらを見る様子もなく、隣にいる女子と愉しげに話している。
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