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隣にいた亮太が駿を見て栞を見て、最後に目を見開いて駿を見てきた。亮太はすぐさま名簿の名前を確認してさらに驚く。
「おい、市倉って駿のあれか! 本当にあいつなのか」
亮太の狼狽した問いに答える代わりに駿は深く頷いた。
茫然と佇む駿たちを見ていた清原が立ち上がる。
「何知り合いなん? ちょっと待ってて。ねえ、栞ちゃん」
大きく手を振る清原を止めようとしたがすでに手遅れだった。呼ばれた栞は振り向くなり、笑顔で近づいてきた。
突然のことで心臓が狂ったように動きだし、あまりの血の巡りに気分まで悪くなってきた。今口を開けば喉から臓器の一つや二つでも出てきそうだ。間近に来ると余計に緊張して思わず顔を下ろす。
清原は栞を対面するようにして駿を手で指す。
「栞ちゃんと知り合いみたいやけど知っとる? えっとー、辻林駿君」
名簿を覗きながら清原が駿の紹介をする。
目の前のすらりとした脚は微動だにしない。やはり覚えていないか。当然だ、たったひと夏過ごしただけなのに覚えている方が不思議だ。それに栞は全国区の選手なのに対して、駿はただの一般人、忘れられていても別段悲しくはならなかった。
腑に落ちたことで緊張がほどけたころ、いきなり外側から潰されるような力で肩を掴まれた。
何が起こったかわからず、顔を上げると大きな目をさらに開けた栞が何度も頷きながら駿の身体を揺さぶっている。
「駿君? 駿君なのほんとに」
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