16人が本棚に入れています
本棚に追加
やっと教室に声が戻ってきてすぐに出てきた話題が部活動だった。原因はもちろん、先ほど嵐のように来た科学部だ。
「高校はマネージャーする予定なの」
「それならバスケがいいよ。かっこいい先輩いたはず」
「見学とかできるんかなー」
様々な意見が飛び交う中、駿たちのもとに二人組の女子が近づいてきた。ショートヘアの子は隣の席だというのは分かるが、まだ名前が浮かばない。その隣の二つ結びの子に関してはどこの席に座っているかさえも分からない。
「佐藤君たちはもう部活決めたん?」
「俺もこいつも水泳部」
さらりと言った亮太に待ったをかける。
「水泳はこいつだけで俺はサッカー」
「サッカーもかっこいいね」と話す二人の横で亮太が両手を上げて首をかしげている。
「おい、嘘やろ。一緒にスイミングで練習しとったやんか!」
「だったら知っとるやろ? 俺がスイミングに行ってたのは体づくりのためであって速くなるためやないって。試合も強引に出させられた一度だけやし」
「半分は正解」と亮太は顔の前で指を左右に振る。正解も何も本人が言っているのだからそれが真実だ。尋ねるのも面倒だと食べ終わったゴミをまとめて五メートルほど先にあるゴミ箱に狙いを定める。その間にショートの子が代わりに訊いていた。
「ならもう半分は?」
「もう半分は恋心さ」
その言葉に振りかぶった手が大きくぶれて丸めたゴミはゴミ箱とは全く違う場所へ落ちていく。
「いきなり変なこと言うなって」と落ちたゴミを捨てて戻ってくると、女子二人が目を輝かせて亮太に詳細を話すようせがんでいる。
いい奴だけど余計なことを言う男だ。小さく舌打ちをしてどんと腰を下ろすと亮太が頬杖を突きながら不敵な笑みを浮かべている。
「なんて助平な顔してるん」
「いや、駿が無垢な男の子で可愛いなって」
また気持ち悪いことを言う。
二つ結びの女子が急かすように前のめりになる。どうやら興味を持ってしまったようだ。
「ねー、恋心ってどういう意味?」
目配せしてくる亮太を一瞥して乱暴に手を振って促す。どうせ止めても亮太は話すだろう。もし亮太と立場が反対だったとしたら、自分も話す。入学したてでクラスメイトと、しかも女子と揉めると色々ややこしいことはこの九年間の学生生活で重々承知してきた。女子と男子はもはや生物が異なると思っている。
最初のコメントを投稿しよう!