58人が本棚に入れています
本棚に追加
/139ページ
「ちょ、ちょっと待てよ人間」
「な、なに? あの、離してもらえますか? サソリが……」
サラマンダーに腕を掴まれながら、空いている右手で今にも動き出しそうなデススコーピオンを指差す。
サラマンダーもデススコーピオンを一瞥したが、まだ時間があると踏んで俺の肩を掴み、顔を覗き込んできた。
やっぱり心奪契約が掛かっているらしい。
彼女の茶色の瞳の中心にはハートマークが浮かんでいた。
「旦那、あんた名前は?」
「え……ユウトだけど……」
「おうっ! よろしくな、旦那! 旦那に怪我させる訳にはいかねえから、ここは退くしかねえか。 ユウトの旦那、こっち来てくれ!」
「ちょっ!」
足を砂から抜こうと踠くデススコーピオンを睨み付けていたサラマンダーが、悔しそうな顔で俺の左腕を掴みーー
「サラマンさん、スラ子が連れてくから大丈夫ですぅ! 離すですぅ!」
「別に良いじゃねえか。 それにこんな良い男、独り占めは良くねえんじゃねえの?」
「むうぅ~!」
俺は足を一本抜くことに成功したスコーピオンにビビりながら、両手に華の状態でエアーズロックの向こう側に連れていかれた。
最初のコメントを投稿しよう!