ミミットの足跡

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 ***  真相は、なんてことのないものだった。  スカーフ――明らかに若い女性がつけるには似つかわしくない、紫色のシックなデザインのそれ――を何故彼が買っていたのか。そして土曜日に毎日通っていたのはどこだったのか。  改めてコンビニの住所から最寄り駅と彼の予想行動時間を調べて待ちぶせた私は、彼が実家に帰るのを目撃することになるのである。ただ単に、北見は両親のところに行っていただけだったのだった。年老いて体力がなくなってきた二人を心配していたがゆえ、毎週なるべく顔を出すようにしていたということらしい。  ついでに私は庭先から、彼が母親にスカーフを渡すのも見た。誕生日プレゼント、ということらしい。浮気などではなく、ただの孝行息子というオチだったわけだ。私がどれ程胸を撫で下ろしたことか。 「そう、ただ浮気調査をしてただけなんです」  私はにっこり微笑んで、相手に告げた。私が恋人にしてきたことをきちんと説明すれば、誤解は解けるはずだと思ったのだ。確かに北見が、自分に親の実家の場所を教えてくれなかったのは不思議ではあるし、素直に言ってくれれば自分も一緒にご両親に挨拶に行ったのにとは思うけれど。 「だって突然冷たくなるし、毎週のように連絡取れなくなったら心配になるでしょ?確かにちょっと、後までつけたのは誤解される原因になるかなとは思ったけど……大切な彼氏ならそれくらいやっちゃうこともあるじゃないですか、ねえ?」 「……桃田(ももた)さん」  納得してくれるに決まっている、そう思っていた。  だが私が話を終えると彼――頭が禿げ上がった初老の警察官は、ためいきをついて言ったのである。 「それがストーカー行為だと言ってるんですがねえ。北見さん、貴女と付き合ってなんかないって言ってますし、周囲の証言もいろいろ出てますよ?ていうか、貴女前科があるでしょ?」  ああ、最悪。  まったく、なんて失礼な刑事だろう!
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