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ハナとメイコは、少し離れたところでヴィヴィの様子を見ている。
「作品、気づくかな」
「ヴィヴィくんなら分かるんじゃないかな、あの作品が誰のものか」
ヴィヴィとして展示されている作品が偽物だと宣言した後、ヴィヴィは飲み物を片手に作品を見ながら会場内を歩いていた。彼はほとんど作品タイトルを見ないようだ。作品のみを遠ざかったり近づいたりしながら見ている。人々は気にしながらも近寄り切れずに遠巻きにヴィヴィの姿を見ていた。
彼は一つの作品の前で足を止める。そこから動かずに、作品を観察している。作品のテーマ、構図、タッチ、画材。
ヴィヴィはタイトルと作者名を見た。そして叫ぶ。
「おいっ。なんでこいつが出てんだよ!」
スタッフが慌ててヴィヴィのそばに走ってくる。ヴィヴィを見ようと集まっていた人たちがさらに駆け寄ってきて、人の輪ができる。
「どうされましたでしょうか」
「なんでこいつが出展できてんの? ヴィヴィの名前で出してたでしょ、こいつが」
「いいえ、ヴィヴィさんの作品とは関係ありません」
「推薦人は? 推薦取れないでしょ、このレベルじゃ」
「推薦人は美術批評家の浅倉様です」
ヴィヴィが指摘した作品の作者は岩神地生(いわがみちき)。数年前からヴィヴィとして兄に代わってメディア出演していたヴィヴィの実弟だった。ヴィヴィ本人が贋作だと言ったヴィヴィの作品は、弟が兄の過去作を模写したものから再制作したいわばコラボ作品だった。
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