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数日後に浅倉からメイコ宛てに推薦人を引き受けるという連絡が入った。その日の夕食はお祝いに二人の好きな鳥つくね鍋をつくった。ビールで乾杯しながら、今後について話し合う。
「わー、本当に取れるとはなぁ、がんばったー!」
「下準備がすごかったもんね、メイコの彼氏のおかげ?」
「あいつにもお礼言っておかないとだなぁ。天下のNCAに作品出せるんだもん。別人名義でも喜ぶよ。いや、むしろそっちのほうが話題とたらおいしいかも」
メイコが元彼に報告している間、ハナは鍋からつくねを掬ってメイコの器に入れる。軟骨入りのつくねは、メイコのお気に入りだ。メッセージを送り終わってスマホを放り投げたメイコは、すぐにつくねを頬張り始める。
「よかったね、ヴィヴィにも会えそうだし」
「あっ、それがさ。浅倉さんが言ってたんだけど、今回の展覧会ってヴィヴィの弟くんも出展するみたいなんだ」
「へえー、そうなんだ。アート一家なんだね」
「どんな作品つくるんだろうね。これまで全然ウワサ聞かなかったけど。すごい珍しい名前だから、ヴィヴィくんの本名もそんな感じなのかな」
「なんて名前?」
「岩に神様の神で岩神。名前は天に生きる。いわがみてんきって読むみたいよ。ネットで調べてみたけど、情報はほとんどないね」
「岩神? ちょっと見せて」
ハナはメイコからスマホを受け取ってメールを読む。岩神天生。この間、ヴィヴィの作品の前に立っていた少年の名前に似ている。スケッチブックに岩神地生と書かれていた。言われてみれば大きな目もヴィヴィに似てたような。
「ヴィヴィの名前って地面の地に生きるって書いて、地生だったりする?」
「いや、分かんない。ヴィヴィくんの本名は出回ってないんだよね。なんで?」
「この間、メイコが勧めてくれた展覧会でヴィヴィの作品の前に立ってた子がいたんだ。その子が持ってたスケッチブックの名前に岩神地生って書いてあったの。名前そっくりだから、兄弟っぽくない?」
「確かに。でも、ヴィヴィくん本人なら、自分の作品の前に長時間立つなんてことしないんじゃないかな」
「ああ、そうか、それもそうだね」
「でもやっぱり気になるから、ちょっと調べてみるよ」
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