春咲いて 風と散る

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 狭い町だから、小学校、中学校共に同じ学校だった。高校も選択肢がそれほど多いわけではない。普通の成績を取る結城と、かなり良い成績を取る美月も、一緒に同じ高校へ進んだ。  クラスは同じだったり、違ったり。幼い頃は美月にとって、結城は単なる顔見知りの1人だった。ただ、6.3.3の12年間は顔見知りが好きな人になるのには、十分な時間だった。  ただ、その想いを美月は結城に伝える事は無かった。 「引っ越しの準備は進んでいるのか?」  いつも通り共通の友達の話や、お気に入りの動画の話などで一通り盛り上がって、話が落ち着いたタイミングで、結城は美月に切り出した。 「全然、やばいよね」 「3月末には引っ越しだろ」 「まだ、2週間あるよ。それに大学の寮だから家具付きだし、余裕でしょ」  話しながら、自分の方を見ない結城が気になって、視線を合わせようとワザと大袈裟に結城の方を見た。  子供の頃からの夢だった看護師になる為に、美月は春から街の大学に行く。上京することが決まってから、どうも結城と、おかしな隙間ができたような気がする。 「ご飯も朝晩付くから、調理道具もいらないしね」 「良かったな、飯付きで。」 「うん、自分でご飯の用意なんか、出来る気がしない」 「お前、料理出来ないもんな」 「うるさい!」  結城を叩こうと手を振り上げたが、美月の行動に慣れたもので、手の届かない位置にすぐ移動していた。  実際、良く出来た2歳年上の姉がいる美月は、ほぼ料理の手伝いなどしてこなかった。  姉は高校を卒業して、地元の企業に就職した。可愛らしくて、優しくて、人に気を使う事が出来る人。何でお姉ちゃんに彼氏がいないんだろう。美月はいつも不思議に思っていた。
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