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しかしヒロ刑事は「束縛に耐えられなくなって、ご主人を殺害なさったんですね? わかりますよ、息が詰まりますよねえ」と、チラチラとウルフ刑事を恨みがましそうに見た。
「ご期待に沿えず、ということになるのかもしれませんが、わたくしは主人を殺してはいません」
美しい未亡人はひかえめに微笑んだ。黒目が大きい瞳はあどけなく、笑うといっそう若く見える。
「ええ? 殺していない? ですが、ご主人の遺体からはヒ素が検出されたんですよ」
「ヒロ先輩、ヒ素が検出されたことは、犯人しかわからない情報として、伏せておくように言われていたじゃないですか!」と、ウルフ刑事は慌てて、ヒロ先輩の袖をツンツンと引っ張った。
「おっと。そうだったな」
ヒロ刑事は少し慌てた様子で、紅茶が入ったカップを手に取った。
ウルフ刑事は慌てて止めたが、すでに紅茶はヒロ刑事の喉をすべり落ちていくところだった。のどぼとけが上下するのをみて、「あーっ!」と、ウルフ刑事が叫んだ。
慌てふためくウルフ刑事を見て、彼女はふふっと笑った。
「毒入りではないので、安心してくださいな」
「そ、そりゃどうも」ヒロ刑事は目を白黒させた。
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