再会

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 朝水とは高校二年の時、同じクラスになった。  どっちが先に話し掛けたのはわすれたけど、初対面の時の視線は覚えている。皆と同じく、疵をガン見して来た。  何故皆と同じリアクションなのに、今でもはっきり覚えているかというと、目つきが違ってたからだ。  爛々と輝かせ、疵を見つめられた。今と同じ視線で。  好奇の目でも、憐みの目でもない。そんな目つきで見られたのは、初めてだった。  俺自身戸惑ったけど、珍しい物を見つけた感覚なんだろうと、気にしない様にして、放っておいた。     ところが、朝水の視線は俺の疵を見慣れてはくれなかった。  いつも熱をはらんだような、絡みつく視線を疵に一点集中してきた。ずっと。  友達としては気が合い、順調に仲良くなって、背筋がぞわぞわしてくるような目つきをスルーすれば、至極普通の友人関係を築けた。  今隣に座っている朝水は、綺麗にセットした髪で、風貌は大人っぽくなっているが、背丈は高校生の頃から変わって居ない。  高校時代はバスケをしていたから、むしろ昔の方ががっしりしていた。    あの頃は茶髪で耳たぶや軟骨までピアスをあけて、リップをいつも常備してたから、唇テカらせて。俺の様に疵どころか、ニキビ一つない綺麗な肌で。  七~八年経つと感じが変わるのは当たり前だけど、元の姿はそのままでチャラついていた修飾が根こそぎ落ちた、って感じになってる。  見た目はそんなに変わっていないとはいえ、俺が逆の立場なら、多分トイレでばったり出くわしても――朝水に気付けてはいないと思う。  当時、下らない事を喋って、お互いの部活が休みの日に誘われて遊びに行ったりと、交友を重ねたけど、視線はいつまで経っても初めて会った時と同じ。  ずっと見つめ続けられる、疵。  ぼんやり再会前の事を思い出していて、我に返った。  ……マジか。まだ、見つめられてた。  目を細めると二重が現れるのも、変わってないな。   「ブシュッ」  マスクをするのを忘れてたから、せっかく恥までかいて流した花粉の攻撃、また食らいはじめてた。    
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