再会

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   俺の事を俺より知ってる? え? どういう事? 俺の事をじゃなくて、朝水の事を俺よりって事? 意味が解らない。   「あ、俺は仕事中だった。でももう今日のノルマは終わってるから、あとは会社寄って帰るだけだけど」    俺の疑問は放置し、朝水はスーツの袖を少し捲り、時計を見て呟いた。  素人目にも良い時計だな、と見定めかけて、止めた。 「朝水、置き薬のセールスって、何も持たないで電車でするもんなのか?」    時計から視線を外して、朝水の全身を見ると何も携えてない。  仕事的によく知らないし、友達にもやってるやつ居ないから、よくわからないけど、不思議に思った。 「いや、いつもは勿論置き薬箱と、補充の薬も積んでる。今日は一旦会社に帰って降ろして来た。別の営業所の寄ってくれって用事頼まれたから、社有車と俺だけだけど」 「車? ここの駅の近くに、置いてるのか?」  頭ぼーっとしてる所為なのか、朝水の話を途中で見失った? 会話に電車が一つも出て来ない。  車移動で営業所に寄ったんなら、何で駅の公衆トイレに?  正直どうでもいいけど、理解出来ないのが癪で脳がこいつの足跡を辿ってしまう。 「車は、お前が乗った駅前のパーキングに置いてある」 「俺が、乗った駅?」 「そう」  意味が解らない。  だけど、お互い乗降の行先とは全く関係のない駅で、今二人ベンチに座ってるってことだけは、解った。    「自分の営業所帰る前に、駅前のカフェで時間潰してたら、岩崎らしき姿が窓越しに見えたから」 「え?」 「店飛び出したけど、お前マスクしてたから。イマイチ岩崎かどうか、自信なくて。ちょっと、一緒の電車乗ってみて」 「え゙?!」 「ここに、来た」  返す言葉が見つからない。  軽く世間話みたいにしてきたけど え? これ、普通? 何?  七年だか八年だかそんくらい曖昧ぶりに一瞬、店から見かけた一年だけクラスメイトだった奴に似た姿を見付けて、車置いたまま電車に乗ってつけて来た……のが、ここ?  怖っ!! って、いやいやいや、思っちゃいけないのか。  ストーカー要素あるなら、この八年位の間にとっくに幾らでも出来ただろうし。  そもそも、朝水が俺のストーカーになる意味なんて、ないし。  俺なんて、金持ちでもない、容姿も普通、ましてや同性、他に何も……
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