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再会後
何度も振り返りながら、家に帰った。
翌日は休みだったから、一歩も外に出なかったけど、何度かドアを開け、外を見回した。
どういう神経なのか驚愕したが、仕事中俺に似てるかもというだけで、電車であとをつける程の行動力。ひょっこり何処かに居るかも知れないと想像が膨らむ。
携帯も最近チェックしないメールを何度も見たり、SNSで繋がってる高校時代の友人に【誰かから何か俺の事聞かれてないか?】と、主語無く探ってみたりした。
だけど、この二日、俺の自意識過剰だったのか? と恥ずかしくなるほど、あいつの影は無く。
別れ際に聞いた『またな』は、幻聴だったのかな? とも思う様になった。
とはいえ、帰ってすぐに洗濯したハンカチは、ずっと傍に携えている。
よくよく思い出すと、借りた時、買い直して返そうと俺自身が思った。また、会うつもりだったのか。どうやって?
再会してから今まで――姿形は見えないけど、気が付けば四六時中、朝水の事を考えてしまっている。頭の中は、朝水一色だ。
記憶の中で薄れていた朝水の姿は、昨日の容姿にアップデートされた。
朧気で色褪せた高校時代じゃない。鮮明なスーツ姿の朝水が、目を閉じればちらつくし、開けていても脳内でぐるぐるしている。
逆に向こうは大人の社交辞令の延長線上で、俺の事なんてすっかり忘れて居るかも知れないのに。
(こんな事ならいっそ、連絡先を交換しておけば良かった)
とまで思いかけて、何故? と自分に突っ込んでもう寝ることにした。
今日はゲームも休む。そんな気分じゃ無い。昨日、帰ってから気分転換にしたけど上の空で、瞬殺してみんなに迷惑かけた。
朝水とは、あの当時ゲームしたっけな?
人生の中で短い一年間の記憶を辿る。
うっすら覚えが有る。二回ほどしたな。今みたいに長いスパンのオンラインゲームじゃ無く、数十秒で勝敗が付く、格闘ゲーム。
話をしているうちに、昔好きだったゲームが一緒だと解って、家に遊びに来たときに、古いゲーム機を引っ張り出した。
俺も腕に自信があった方だけど、朝水だって久しぶりにした癖に、めちゃくちゃ強かった。
必死で技を出して戦ったけど、何度も負けた。
俺は画面から目を離す余裕も無く、応戦して、勝負が付いた後も項垂れている自キャラを見て悔しがって、ふと横を見たら
朝水は画面では無く、そんな俺の姿を見ていた。
視線は、横顔の頬の――
「あーーーー! もう!」
明日は朝早い。俺は布団に潜って全力で無心になった。
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