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休み明け。ジムまでの出勤途中、電車内も道のりも姿は無いかと見回した。
勿論朝水の影すらない。不規則な遅出で出勤時間もジムの場所さえ知らないのに、と我に返って自分のやっていることが馬鹿馬鹿しくなった。
「お疲れ様です……」
花粉症で参っている毎日。一日休んで心身元気になっている筈なのに、一昨日より疲れてる気がする。
事務室にローテンションで入ってしまった。職業柄、元気さが無いとどやされる副店長の姿が目に入り、背筋が伸びた。
ハキハキしないと、一日目を付けられる。
「おつかれさま! 岩崎君、挨拶、元気が無いわね」
「す、すみません! お疲れ様ですっ!」
「ただでさえ、マスクで声が籠もってるんだから――」
変わりの無い一日が始まった。副店長の顔を見ると作り上げられた笑顔の裏はご機嫌斜めそうだ。
こういう時には、デスクに座って雑務をするより、身体を動かして率先して大変なスタジオの掃除をする方が、喜んでくれる。
これもいつもの事だ。早くさっさと事務所から抜け出そう。
鞄を席に置いて……ん?
何も変わらない事務所と副店長と俺。
だけど俺の席の背後に、見慣れない物体がある。
なんだ、あれ? 鼻と目がグズグズでピントが合わない。
スチールカウンターの上にある箱を、まぶたを擦りながら凝視してると
「あれねー、昨日入れたの」
俺の視線の先を察知したのか、副店長が指さしながら突然喋りだした。
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