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こんな安アパートなんてすぐ見つかっても仕方ないか。そこはもう気にすることをやめた。問題なのは匿名さんが、城井杏樹じゃないって事だわ。
コンコンコンコンコン
5回ノックされた。本当に、来たんだ。
「……どちら様、ですか」
「俺だ。開けろ。」
断れない甘い声にどうしようもなく頼り縋りたくなった。もう助けて、と。私の社会を返してと。
「おい、なんで泣いてんだ……」
「あ、ご、ごめんなさい、」
「社会の邪魔ってなんだ。」
「……あなたは、誰なの?」
「城井杏樹(しろいきょうじゅ)。名刺のフリガナは、源氏名だ。」
しろい、きょうじゅ。
だめだ、本当に知らない。
「とりあえず中、入れてくれ。さみいよ。」
いかにもホストです、ってスーツを着こなしている城井杏樹(きょうじゅ)を、ホイホイと中に招いてしまった。
「えっと……コーヒーでいいですか?」
「いや、水くれ。酒入ってんだ。」
「あ、そっか。お仕事………仕事!!!」
「!?おい突然大声出すなよ、どうしたんだ?」
ミネラルウォーターを渡してぽつりぽつり話している自分がいた。それを全部聞いた城井杏樹は、顔を歪めた。
「分かった。俺も調べてやる。こう見えてコネクションは多い方なんだ。」
「え、そんな、なんでそこまで。」
「そんなん、好きな女のためだからに決まってんだろ。」
今、この人なんて言った?
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