139人が本棚に入れています
本棚に追加
「え、まじで。」
「まじで。全部バレた。自主退職ってことは退職金もないし、事情が事情だから労基にも言えないし。」
「ここまで順調だったのにー!!誰だよ匿名って!卑怯じゃん!!」
「人に恨まれるような事しかしてないお家だから仕方ないわ……とりあえず散財しまくったツケが回ってきちゃったのかな。ボロアパートに引っ越す手続きしてきた所。」
「あのマンションには住めないわ、無職じゃ……。」
誰だよ本当に!って真希が私以上にキレ散らかしているおかげで、私は逆に冷静になってきてる。また就職活動、1からどころかマイナスからやり直しかぁ。
「ねえ、ちょっと葉奈!!聞いてる!?今日はあたしが奢るから飲みに行こ!!」
「え、ああ、ありがとう、行く。」
都内でも有名な歓楽街に足を運び、居酒屋から何軒もハシゴして。
久しぶりに「私って不運な生い立ちなのかも」なんて愚痴ったりして。
「次どこ行く?」
「まだ飲めるからなあ、バーとか?」
どうしようかね、って話してたら突然後ろから腕を掴まれて、反射的にその手をくるりと反して振りほどいてしまった。
「あ、すみません、痛かったですか。」
「おい、お前俺の事知ってるだろ!?」
「……はい?知りませんけど……?」
明らかに住む世界が違いそうで似てそうな、夜の男だった。
「……思い出したり、気が向いたら電話しろ。」
そう言って無理矢理渡された名刺には
ホストクラブ A
城井 杏樹-Anju-
と書かれていた。全くもって誰だかわからなかった。
最初のコメントを投稿しよう!