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電話が鳴っている。知らない番号からの着信音。なんだろう。
寝惚けた頭で「もしもし」って出てみたけど、今何時?時計を見たら夜中の3時って。非常識がすぎる。
「……もしもし?」
『三乗葉奈か』
「え……あ……」
あの人だ。城井杏樹だ。一気に覚醒した頭は混乱と期待と不安でわけがわからない。
『何か思い出したか?』
まるで、後ろから抱き締められているような甘い声で。怖い、と思った。あまりにも優しくて。
「ごめんなさい、分かりません。」
『そうか。じゃあ再々会すればいいだけだ。今からお前の家に行く。』
「は?」
『引っ越してたな、そんなセキュリティガバガバな所でよく寝られるな。』
なんで。なんで知っているの。
私の家をなんで知っているの。
まさか、匿名さんって、まさか。
「私の、社会を、邪魔してるのは、あなたなの?」
『は?なんの事だ?』
「匿名で、あちこちに、私の素性が、」
『……は?今すぐ行くから待ってろ。着いたら5回ノックする。それまで誰が来ても鍵を開けるな。』
何が起きてるの。匿名さんじゃないの?じゃあ、じゃあ誰がなんのために。
恐怖で震えるのは、いつぶりだろう。
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