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「え、ええと、その、おれ、花嵐 ソウタツって言います、ま、漫画家やってます……、」
さっきまでの(妙な)威勢はどこへやら、醜男はボソボソと小さな声で自己紹介を始めた。
そわそわもじもじと落ち着かない様子が見ていてイライラとしてくる。
……というか、名前が先程聞いたものと違わないか? そんな疑問が顔に出ていたのあろう、隣に座る霙がすかさず注釈を加える。
「"花咲 葵"はペンネームなんですよ」
「ああ、そうなのか。私は本みょ──」
「て、天道さんはペンネームじゃなくて本名で本を書かれているんですよね! と、時々下の名前を"カリン"ではなくて"ヒノワ"とか"ニチリン"って読む人がいるって話でしたよね?!」
急に謎のテンションで入ってくるんだな、この男。それにそんなこと何故知っているんだ?
訝しがるように見つめると、不美人男はハッとした顔をしてから俯く。
「ま、前に雑誌のイ、インタビュー記事で読んで。あ、でも、先生のファンなら誰でも知ってることですから……」
"だから気持ち悪くないですよ"とでも言いたいのだろうか? ……なんてゆうかこの男、私をひどく苛つかせるな。
さっさと断って帰りたいのだが、一つだけ気になることがある。
「"ソウタツ"ってどういう字を書くんだ?」
純粋な興味で訊ねると、不細工男はパッと顔を上げてこちらを見る。
それから隣の席に置いてあるリュックの中からメモ帳とペンを取り出すと、カリカリと何やら書き込み始めた。
そして……。
「こ、こうです! こう書きます!」
興奮気味に差し出されたメモ帳には、男の大きな図体とは不釣り合いな小さくて丸い字で "蒼辰" と書かれていた。
……まぁ、読めなくはないな。
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