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ガーガーと高いびきをかいて眠るその男は、私の身体を抱き寄せて実に気持ちが良さそうだ。
そんな男とは反面、私はゾゾゾと血の気が引いて思わず叫び出しそうになった。
声をグッと我慢すると、今度は胃の腑のものを全てぶちまけてしまいそうなほど気持ちが悪くなる。
四方に跳ねたもさもさの黒い髪は傷んで潤いはなく、無駄に伸びた前髪が両目を隠している。
低い団子鼻に、ポカンと開いた大きな口からは唾液が流れて下品極まりない。
顎や口の周りにはプツプツと短い髭が生え、肌も浅黒くてキメが粗い。
つまり目の前のこの男は、不美人、不細工、醜男──私がこの世で一番嫌いな手合いだ。
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