ジュニアとの再開

1/1
前へ
/10ページ
次へ

ジュニアとの再開

男子が十二歳で成人するこの世界では、その誕生日に親元から離れ、養成所で四年、勉強・修行し、その間に国策としての結婚もする そして十六歳の誕生日に卒業し、帰省する "アザトデス王国"首都にある兵士御用達の酒場で、息子は父と待ち合わせをしていた 「親父、戻ったぜ!」 息子の評判は耳にしていた 養成所では頭三つ飛び抜け、全ての成績を一位で卒業したのだ 部隊のエースである父親としても鼻が高い 感動の再会…の筈だった 「どうしたんだよ!なんでだよ親父!」 周囲の兵士仲間は頭に手を当てて嘆息した 無理もない、久々に見た父親の姿が変わり果てていたのだ… 「どうしたの?なに怒ってるのよ?」 「その格好は何だ⁉︎なんでワンピース着てるんだよ!」 「え?似合わない?今日の為にオシャレしたのよ」 「何言ってるんだ!ヴァルハラの異名で恐れられてた親父はどこいったんだ!」 父親は化粧をし女性服を着て、女言葉で息子を出迎えた 仲間の兵士が割って入った 「まあ待てジュニア、話しを…」 だが興奮した息子は兵士を跳ね除けて父親に突っかかる 若いのにとてつもない筋力だ 涼しげな顔でそれをひょいといなした父親は 「相変わらず元気そうねえ、卒業おめでとう。そして入隊おめでとう。期待してるわよ」 と言うと酒場から出て行った 「おい!待て」 追いかけようとするが周囲の兵士が束になって静止した 「落ち着け!お前の父親でもあるが部隊長だぞ!」 部隊長にはプライベートな時間が僅かしかないし、部隊では父も子もない 「とにかく頭を冷やせ!これから二十歳の誕生日まで四年間は青年部隊だ」 父に再会したら話したい事が沢山あった 成長した事、誰よりも強くなった事、これから沢山役に立てる事を…それなのに、やっと会えたのに 不意にサイレンが鳴り響く 兵舎の方角からだ 緊急召集だろう 兵士達がゾロゾロと兵舎に向かう 父親も向かっているだろう (あの格好で?) 幸先悪い…そう顔を曇らせながらジュニアは走った
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加