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「……総司です。沖田総司」
あんたもだろう。
そう言い返したかったけれど非は僕にある。遠慮無く手を握ったら、思ったよりも力強く引っ張り上げられた。
大きくて硬い竹刀胼胝のある感触は先生と同じだ。けれど先生より白くて細い指が僕の手を包み込む。
……何だろう……変な感じがする。
「莫迦、何時まで握ってやがる」
気付けば片手一本で軽々と引き上げられていた身体。
どうやら立ち上がってからも僕は彼の手を握り締めていたらしい。
振り払われるように離れていった指の感触が名残惜しかったのは何故なのか、その時は判らなかった。
「稽古、終わったのか?」
「ええ。これから井戸へ行く所です」
「……ふぅん」
歳三さんは、僕を頭の天辺から爪先までじろじろと眺め回した。
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