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その頃は元服していたとは言え、僕は彼の目線位の身丈しか無く、彼は少し腰を曲げるようにして僕の顔を覗き込んで来た。
……綺麗
素直にそう思える人だ。
豊かな漆黒の髪を緩く後ろ手に縛り上げていて、白皙の肌に奥二重の涼やかな双眸と、淡く色付いた薄い唇。整った顔なのに、表情は悪童じみていて、そこが叉魅力的な、男。
近藤先生は僕が歳三さんに近付く事を非道く嫌がった。
曰く、彼は『誑し』なのだと言う。
それが所謂焼き餅だと知ったのは、もっとずっと後の事だ。
駄目だと言われると余計に気になる。
僕は、僕には無い物を沢山持っているこの人が気になっていて仕方が無かった。
「お前、強えのか?」
「師範代ですから」
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