いんたーねっと。

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いんたーねっと。

「あー、なるほど。どんどん連鎖してく感じかあ。ま、よくあるよね」  私は画面をスクロールして読み進む。案の定『後輩二人は舌を抜かれた遺体で発見された』とある。夜中にこうしてネットで怖い話を読むのが大好きな私は今夜もいろんなサイトを巡っていた。明日は仕事も休みなのでゆっくり夜更かしできる。両親は既に就寝しており家は静まりかえっていた。マウスをカチカチとクリックする音だけが響いている。学生時代から使っているデスクに乗っているのは父のお下がりのノートパソコンだ。型はずいぶん古いがまぁネットを見る分には特に支障ない。 「このサイトなかなかいいじゃん。何てサイトだっけ。ええと、Enma。ああ、閻魔か。それで嘘つき云々の話が多いわけね」  更に画面をスクロールさせようとした瞬間、スマホが静かに震えた。画面にはメッセージ着信の通知が出ている。アプリを開き確認すると彩香(あやか)からだった。 (彩香か……)  彼女は会社の同期で今は少し離れた支店にいる。入社してすぐの研修で隣の席だったのが縁でしばらくは親しくしていたが、私が大人しい性格なのにつけ込んですぐに利用しようとしてくるようになった。 ――千紗、その色はあんまり似合わないよ。私の服と交換してあげる。 ――千紗はもっとダイエットしなきゃ。そのケーキ私が食べてあげる   数か月前に彩香が異動となりほっとしていたところだった。私はため息をついて画面を見つめる。 『こんばんはー。どうせ起きてるでしょ? 来月やる同期会のお知らせだよ。千紗は出席で変わりないよね?』  私はそっけなく、出席するよとだけ返信した。いつもならここで終わるのだが珍しく彩香から再度メッセージが届いた。どうやら飲み会が中止になり暇をもて余しているらしい。迷惑な話だ。 『と、いうわけで暇なのよ。どうせ千紗もひとりで怪談話でも読んでるんでしょ? ちなみに今はどんな怪談読んでるの?』  面倒臭いなぁと思わず呟きつつ、仕方ないので今読んでいた話の内容をかいつまんで返信した。 『へえー。今はそんな怪談流行ってるんだ。で、千紗ならどうやって答えるの? 嘘つきの子が悪い? 死んじゃえの子が悪い?』  そりゃさすがにちょっと嘘ついたぐらいで死んじゃうのはかわいそう、私はそうメッセージを入力していた。と、いつの間に部屋に入ってきていたのか私の膝の上に飼い猫のモモちゃんが飛び乗る。驚いた私はスマホを取り落とした。 「ちょっとモモちゃん、ビックリするじゃん」  いつも両親の部屋で寝ているのに珍しい。振り返ると部屋の扉がほんの少し開いていた。さっきトイレに行ったときちゃんと閉めていなかったらしい。椅子に座ったまま手を伸ばしてスマホを拾う。入力したメッセージを送信しようとした瞬間、パソコンの画面が目に入った。 (やだ、なにこれ)  画面には今彩香とやり取りしていたのと同じ内容が表示されている。 ――こんばんはー。どうせ起きて……  最初私はSNSでのやり取りが盗聴されているのかと思った。ウイルスにでも感染したのか、と。だが画面には私が今まさに入力していた内容も映し出されている。まだ送信していないのに。それどころか彩香からの返信までが表示されていた。怖くなって画面を閉じようとするが何度×印をクリックしても消えない。パソコンの電源を切ろうとしてもダメだった。そのまま放置するのも恐ろしく、震える手でマウスを握り画面をスクロールする。 ――そう、千紗はそう思うんだ。じゃあ私は死んじゃえって言った子の味方しよ。やっぱり嘘はよくないよね。  彩香からの返信メッセージのすぐ下に『次ページへ』というボタンがある。それをクリックしようとすると普段大人しい猫のモモちゃんが耳を伏せ唸り声をあげた。 「何よモモちゃん、どうしたの?」  わけがわからない。いや、そうか。不意にある考えが浮かぶ。これ、ひょっとして。私はスマホに入力したメッセージを消してこう打ち直す。 『そりゃやっぱり嘘つきが悪いよ。嘘つくと閻魔様に舌抜かれちゃう。』  しばらくして届いた彩香からの返信には案の定私とは逆の主張がしてあった。おそるおそる画面を見上げるとパソコンの画面も新しく打ち直した内容に会話が書き変わっている。私はニタリと嗤い画面をスクロールさせ『次ページへ』をクリックした。 了 『次ページへ』
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