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私が海と初めて出会った時は今じゃ考えられないくらい海は荒れていた。
日本人の父親とイギリス人の母親を持つ海は
誰もが目を向けるほどの美形だったが、当時は
今よりもっと長髪であらゆる場所にピアスをしてた。腕にあるtattooは今でも残ってるし、
もう辞めたけど出会った時はタバコを吸っていた。いわゆる、ワルって奴だ。
「拾ってあげようか?」
私が海に話しかけた事が私達の始まりだった。
海は私にとって癒しだ。
あの日、交わした約束を守り続けてくれる海が私は友達として大好きだ。
「今日、借りた映画面白そうだよねぇー」
「累さん怖いの苦手なのにすぐ借りるの辞めた方がいいですよ」
何気ない話をしながらお互いに笑い合い、一つの袋を2人で片方づつ持って海の家に向かう。
バグはしても手は繋がない。
手を繋ぐ事はしない。
海の家は駅から私の家と反対方向に歩いて5分くらいの場所にある。
少し急な坂を登ると見えてくる小さな白いアパート。建物は古いがヨーロッパ風の外観はとても可愛くて私は気に入っている。
私と海だけの場所。
私が海にあげた居場所。
「あー癒されるぅ」
海の部屋に着くと慣れた様に海のベッドに私はダイブする。
1DKの小さなアパート。私が高校時代に過ごしたアパート。
「累さん、ご飯食べましょ?」
慣れた様にテーブルの上に買ってきたご飯を並べる海を見つめて昔の海を思い出す。
敬語なんか使っちゃって、昔は生意気な口調だったのに。
ずいぶん丸くなっちゃって。
本当可愛いんだから。
一度だけ海とSEXしたあの日から私達はお互いに求め合う事をしない。
私達に恋愛感情はいらない。
友達の様に、家族の様に変わらない関係。
ずっと一緒。ずっと変わらずに側にいる。
ベッドから起き上がりグリグリと海の頭を撫でてよしよしと可愛がる。嫌がる海をみて自然と私も笑ってた。
男女の愛なんていらない。
欲しいのは海と一緒にいられる安定した日常だけ。
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