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05 朝比奈重蔵(R18)
朝比奈家は、元を辿ると浅く一九六〇年代にさかのぼる。
この頃、神奈川県逗子市に山嵜重蔵という農家の息子がいた。
農家といっても専業ではなく父の山嵜佐吉はほうれん草を主とする近郊野菜の栽培で収入を得、息子の重蔵は中学を卒業すると同時に担任の先生の紹介で地元の不動産会社へ就職し給与収入を得るという兼業農家だった。
佐吉は重蔵に農家を継がせる意思はなかったようで、重蔵が中学三年に上がる時、
「これからの日本、農業は先細りするだけだからお前は好きなことを見つけてそれに一生懸命情熱を傾けなさい」
と言った。
そう言われてもまだ中学三年、歳にして十五歳になるかならないかの年齢でそうそう自分の生きる道を見定められる訳はなく、重蔵は取り敢えず学校の勧める地元の不動産会社へ就職した。
実はこれが人生最大の転機となる訳なのだが、重蔵はその会社で、不動産仲介、土地開発、土地信託などの知識を実務を通じて増やしていく。
中学しか出ていないが勉強が嫌だったり出来なかった訳ではなく、仕事が終わると宅地建物取引士の勉強をし受験資格を満たすとすぐに合格した。
ところで、当時、東京を中心とした都市部とその近県では、農業を継がない家が格段に増えていった。
農家を継がないと言うことは農地をどうするかという問題につながる。
しかし、宅地に転用するのか、するとして売るのか運用するのか、運用と言っても何をどうするのが運用なのか、地主にはその問題解決をするノウハウがなかった。
追い討ちをかけたのが土地の固定資産税だった。
経済発展とともに土地の価格が急騰し、本百姓は多額の税金を納めなければならなくなった。
重蔵は二十七歳の時、父佐吉を若くして亡くす。
享年五十五。
後を追うように母みよが二年後に亡くなる。
こちらも享年五十五。
これにより、代々山嵜の家は本百姓であったため、他の地主同様、神奈川県郊外とはいえ莫大な税が跡取りの重蔵氏に襲いかかってきた。
この時、勤めていた朝日奈不動産社長朝日奈紀行氏から適切な助言を得られていなかったら、おそらく重蔵氏は今の地位を築いていなかった、そればかりでなく、土地も家も放棄し夜逃げ同然で逗子から姿を消すしかなかっただろう。
重蔵は紀行社長の助言通り、すべての農地を宅地に転用してアパートを建てその家賃収入を得る、いわば土地活用を行った。
すると横浜や横須賀から程よい通勤圏であったために入居希望者が後を絶たず、大当たり。
彼はそれまで父が得ていた農業収入の二倍以上を叩き出すことになった。
しかも、当座として支払わなければならなかった税金や土地活用の資金などはすべて紀行社長が援助した。
重蔵氏はこの方法で、数ある地主の相談相手になっていく。
地主たちにとっては、重蔵の家も同じ問題を抱えていたわけだし、知らない顔でもない。先祖代々受け継いできたこの大切な土地をどうするか相談に乗ってもらうのに、重蔵という人物はうってつけだと思った。
こうして重蔵は二十代の若さで本百姓や名主、はては地元議員とも人脈を構築していく。
同時に、紀行社長の存在は重蔵氏にとって絶大なものとなり、ことあるごとに重蔵氏は社長の助言や指導を受け続けていく。
さて、そうまでして、何故、紀行氏は重蔵氏に様々な支援を行ったのか。
紀行社長は三十歳の時、美子という女性と結婚している。
この時美子は二十歳。
北海道から横浜へ出てきた美子はバーで働いていた。
そこへたまたま紀行氏が来店し、彼はその後猛烈に彼女にアプローチする。
美子としては最初はうんと歳の離れた客だし、鬱陶しいなと思っていたが、執拗な紀行氏のアプローチが奏功し、いつしか美子は紀行氏を思うようになり二人は結婚。
しかし五年後に破局し美子は実家のある北海道へ帰っていく。
その後紀行氏は親戚からお見合いの話を持ちかけられるも気持ちが進まず、ついつい一人やもめを続けていく。
紀行氏は、
「もうこの歳だし今更奥さんをもらってもしようがない」
と周囲には言っていたが、社員の間ではある噂が広がってもいた。
噂の種は重蔵少年だった。
重蔵少年は誰もが認める美男子だったのだ。
破局を迎えるまでの五年間、夜は双方とも燃え上がるような熱情で互いに互いを愛した。
紀行氏のけたたましく吼える熱情が美子の脳髄までをも刺激して狂おしくさせ、美子は何回も果てた。
紀行氏も美子の放出するかぐわしさを嗅ぐたびにけたたましくなった。
両の房は柔らかくその突端は吸うたびに固くなりもっともっとと求めてきた。
真っ白な肌を手全体でさすると美子はそこを追うように鳥肌を立てて身をくねらせた。
舌を這わせると臍のあたりで美子は決まってのけぞった。
更に下へ這わせ足の付け根にフーッと息を吐くと声にならない声をあげた。
最も敏感な部分をよけて太ももからふくらはぎを丹念に頬ずりすると、視線の先に美子の足指がピクピク震えている。
それを確認してから紀行氏は思いっきり指を咥えるのであった。
最初は親指。
指の腹を舌全体でゆっくりこねてから爪の間に舌先を入れて左右に動かすと一日に溜まった垢が唾液と混合してえもいわれぬ匂いを放出した。
指と指の間も同様で、しかし、ここは美子がもっとも敏感に反応する場所でもあった。
美子は絶叫にも近い声になってたまらなくなり求めてくる。
それでも紀行氏は充分に両足指を唾液で湿らせるのをやめない。
一刻も早く欲しがっている美子の放心したような目を確認したのち、ようやく紀行氏は太ももの付け根へ顔を移して鼻の先で茂みの匂いを嗅ぐ。
すると美子は全身を痙攣させ、
「ああああ」と言いながら大抵漏らした。
紀行氏は体温に近いその液体と粘着質な液体が入り混じったものを顔全体で受け止め、舌を挿れて声を出し震わせる。
振動を受けた美子はこれ以上堪え切れないのでさらに漏らす。
紀行氏の、
「ああ、こんなにお漏らしして、イケナイ子だ」
と言うのが合図だった。
元の位置に戻って体を重ね覆い被さるように入っていく。
美子は思うのだった。
昨夜より今夜のほうが熱情的で、今朝より今夜のほうが激しい。
私はこの人にこの上なく愛されている。
美子は紀行氏を体全体で感じ、美しく身をくねらせ、歓喜の声をあげ、紀行氏を受け入れ続けた。
しかし、そんな日常をぶち壊したのは、誰でもない重蔵だった。
美子夫人は、直感でそれを察知した。
重蔵が朝日奈不動産へ就職してから夫がおかしい。
紀行氏は、重蔵少年が入社して会社の雰囲気が明るくなったと感じていた。
紀行氏は学校からの推薦状もあることだし両親は農家とはいえ本百姓であるから土地持ちで信用がある。
せめて高校くらいは出ておいてほしかったが、人一人雇うくらいの余裕はあるし、断る大した理由もないため、紀行氏は彼の就職を許した。
誰もが重蔵少年に仕事のいろはを丁寧に教え、重蔵少年も不動産に関する様々な知識や見識を驚くほどの速さで身につけていった。
性格も素直で地主に好かれるのではないかと思ったから、逗子で一番の地主を重蔵少年に紹介しようと、重蔵を助手席に乗せ車で移動していた。
途中、赤信号で車を止めていた時、重蔵が足元のカバンの資料を取ろうと前かがみになった。
何気なく見ると、重蔵の半袖シャツの胸元から隆起した乳首がチラッと目に飛び込んできた。
その瞬間、紀行氏は自分が勃起していくことに気づいてしまった。
不覚にも二十歳に満たぬ少年のそれを見ただけで。
改めて少年を見返すと、胸板も厚く、筋肉も適度な盛り上がりを見せ、日焼けした跡が眩しく、紀行氏の性的指向性を刺激してしまった。
見てしまった乳首は強烈に紀行氏の脳へ性的信号を送った。
発達した大胸筋の盛り上がりによってそれは下を向いていた。
自分より大きめで茶色い乳輪はなだらかに膨らんで楕円形、乳輪腺が白くプツプツ点在し、しかも先端は大きく膨らんでいる。
紀行氏は重蔵少年を脱がせてそこを力一杯吸いたい衝動にかられた。
でも、一方で、
「自分にそんな性癖があるなんて、そんなはずがない、そんなはずが」
と言い聞かせ思わず目をそらせた。
それ以来、紀行氏は重蔵を素直に見ることができなくなっていた。
彼と一緒にいると頭がおかしくなるくらい変な気分になった。
特に車で彼と移動する時は手をスルスルと股に滑らせて大腿筋の膨らみを確かめ、自分より大きいのを力一杯握ってみたくなった。
このような感覚が自分に目覚めてしまったことに対して、美子はどう思うだろう。
申し訳ない気持ちがもたげる一方で、そう思えば思うほど、逆にそれ以上に重蔵を感じてしまって、その度に下着を汚し冷たい感触を得るのだった。
そんなことがあってから、なぜか紀行氏は美子の夜の相手をしてくれなくなった。
してくれないというより成立しなかった。
美子は紀行氏へ一生懸命献身した。
美子は悲鳴にも近い声で「お願いよ」と言って咥えた。
でもだめだった。
紀行氏は「申し訳ない」と言った。
ただ、重蔵に対する自分の気持ちは言わない、いや、言えなかった。
一線を超えてしまったのは美子の方だった。
美子は紀行氏が言わなくとも夜の営みがなくなった原因は重蔵であることはわかっていた。
だから自分たち夫婦の関係を壊した犯人をどうやって懲らしめてやろうか、思い巡らせていたのだった。
美子は昼間みんなが出払い重蔵が一人だけになる時間帯をずっと待った。
その時がやってきた。
女性を知らぬ未成年の男子がついフラフラとなびいてしまうには美子は十分すぎるほど魅力があった。
しかも自分は男性の味なら十二分に知っていてどうすれば男が喜ぶかも知っている。
美子の魔法に重蔵少年は導かれた。
今日は誰も使わないことを知っているので車庫は格好の場所だった。
重蔵少年は車庫と車の鍵を持って美子の導かれるままに付いて行った。
美子は紀行氏が重蔵少年に魅かれる要素を一つ一つ確認していった。
端正な眼差し、キリッとした眉、姫のような睫毛にスッと伸びた鼻筋、それに口角の上がった口元。
逞しく発達した太い腕には血管がうっすら浮かんでいた。
まず美子は自分の誇れる唇を少年に重ねた。
少年の唇は震え固く閉ざされていたが、舌でこじ開けるとすぐに柔らかくなり彼も絡めてきた。
いつまでもぎこちない姿勢でいるので、こういう時はこうやってこういうふうに女を抱くのよと教えてあげた。
既に紅潮している少年は息遣いまでも荒くなってきた。
でも次にどうすれば良いかわからないでいるから、ふっくり盛り上がっている少年の乳首を指で湿らせ触ってやった。
すると少年は「奥さん」と言った。
みぞおち、へそへと指を滑らせ、
「ベルトを取って」
と、言うと、少年は弾かれるようにベルトを外してチャックを下ろした。
美子は、もうどうしようもなくなっている彼をパンツの上から力一杯握ってやった。
握るたびに反り返してくるのでパンツの中に手を入れた。
少年は「奥さん」とまた言った。
美子だって夫と途絶えていたから鬱憤がたまっていた。
パンツを下げ左の人差し指で先端を押し下げパチンと弾くと、反り返ったのがビューンとバネのように跳ね返りピチャッと音を立てた。
何回か繰り返すうちに透明な液がドンドン出てきてへそと先端の間で糸を引き始めた。
美子は今度は右手で乱暴に握った。
その瞬間彼はハッとしたが、それでも棒立ちのまま耐えていた。
これ以上もてあそぶと終わってしまいそうなので、フリルのスカートをめくってやった。
この時のために下着はつけずにいた。
少年は焦って何度も間違えた。
ようやくヌルッとすると、それは、熱くて、硬くて、大きくて、太くて、すごく反っていた。
その先端が美子の一番いい所をこすった。
美子は少しだけ声を上げた。
その声を合図に少年はすぐ終わった。
少年は「奥さん、俺」と言った。
美子は人差し指で少年の口に封をしました。
勝った。
私は夫に勝ったのだ。
これで重蔵と夫は一線を超えないし夫が求めても重蔵は拒絶するに違いない。
美子は少年にトドメの一言を言いました。
「あなた、今、何したか、わかってるでしょうね」
ある日、重蔵が神妙な顔で辞表を持ってきたので、紀行氏はその日の晩、彼をレストランへ連れ出した。
紀行氏は自分の重蔵に対する気持ちに気づかれてしまったかと焦りましたが、逆に重蔵は目に涙を浮かべ、
「僕は社長を裏切りました」と言った。
「一体急にどうしたんだ。怒らないから話しなさい」
と聞くと、やっと美子さんとの情事を白状した。
美子に子どもができたとも彼は言った。
紀行氏は頭が真っ白になった。
冷静さを取り戻すのに少々の時間を必要とした。
でも紀行氏は重蔵を責めなかった。
少年はなぜ自分を責めないのか聞いてきた。
ここまできたらしようがない。
彼は理由を簡潔に言った。
今度は重蔵が呆然とした。
紀行氏はこう付け足した。
「私は美子を追放する。子どもも認知しない。お前も認知するな。そしてお前は私の養子になれ」
このあと、美子は身籠ったまま実家のある北海道へ帰っていった。
そして重蔵氏は毎晩紀行氏と残業をした。
紀行氏の言われるがままだった。
そんな折、重蔵の両親が相次いで亡くなると、紀行氏は重蔵氏が相続した土地の活用方法を指南し当座の経済的な問題を全て援助してくれた。
重蔵のほうも、残業が嫌だったのは最初の数ヶ月だけで一年経ち二年経っていくと次第に不思議なくらい今の自分が幸せだと感じるようになっていった。
紀行氏は邪な気持ちで自分を扱っているのではないこと、同性愛とはいえ世間に認められない関係であるとはいえ愛されていることに充足感を感じるようになってきた。
だから喜んでくれる紀行氏を見ると自分も喜ばしく思った。
唇を吸われるとお酒を飲んだ時みたいに血が上り自分も唇を求めた。
これが、紀行氏の重蔵に対する過剰なまでの援助の真実だった。しかし、この先に重蔵にとって試練がやってくる。
ある晩、紀行氏はいつになく酔っていて興奮していた。
だからそんな紀行氏をもっと喜ばせたいと思って、今晩は自分が上になってみた。
一生懸命、腰を振った。
自分の汗が紀行氏の腹にポタポタ落ちた。
体全体に電気が走り、もっともっと振った。
紀行氏の眼が次第に上目遣いになってきた。
これ以上できないくらい振ると、「ヒィ~」と言って紀行氏が引きつり始めた。
そしてビクビクッと全身を痙攣させた。
一緒に果てたいので自分も固く握って一生懸命した。
いきそうになったので紀行氏を見ると、紀行氏の口から泡が出ていた。
全身がブルブル震え出した。
「お義父さん?」
と聞いてみた。
目は相変わらず上の方をひん向いて、指も痙攣している。
そのうち首がうなだれ、口から泡とよだれがこぼれた。
眼をひんむいてそれっきり動かなくなった。
重蔵はどうして良いかわからず義父の顔を引っ叩き起こそうとしたが動かない。
途方にくれてしばらく気を失ったが、紀行氏の下半身から漂う臭い匂いで目が覚め、慌てて警察を呼んだ。
紀行氏が亡くなると、養子であることから重蔵氏は正式に朝日奈不動産を引き継いだ。
そして片っ端から、紀行氏が生前アドバイスしてくれたやり方で、逗子市一帯を首都圏のベッドタウンに変えていった。
これを事業のセオリーにして東京へ進出し開発に揺れる関東一円において大成功を収め、重蔵氏は一代で不動産王の名をつかみ取った。そして四十歳で正子という財界の娘と結婚し、東京都渋谷区初台に、地元の人から初台御殿と呼ばれる、敷地一千坪はあろうかという大邸宅を建てた。
事業で大成功を収めた重蔵氏ではあったが、心の中にひとつだけ、墨を落としたようにどす黒く、ふと頭をよぎって心を深く沈ませる、小さいけれど非常に重いひっかかりがあった。
美子の消息だった。ある意味、美子は重蔵氏にとって厄介な存在だ。
自分の過去、普通ではない紀行氏との関係を知っている人物が唯一、北海道のどこかにいる。
自分は新聞や雑誌社に取り上げられるようになり、今では全国的に名前も顔も知れ渡っている。
だから、いつ何時、彼女が自分の目の前に現れるやもしれぬ。
彼は息子の静馬氏に美子の消息を調査し報告するよう指示を出した。
ただし興信所などを使ってはならぬ。
これは誰にも知られてはならぬのだ。
この世から抹殺せねばならぬのだ。
時間がかかったが次のような報告があった。
彼女は帰郷後、国鉄N線Y駅前の小料理屋「歌乃処(かのじょ)」で働いた。
身寄りのものとは絶縁状態。
その理由は詳細不明だが男と思われる。
その後、国鉄民営化とともにN線が廃線となり街もすたれ歌乃処も店を閉じた。
その後転々とし、男性と関係を持つものの、関係が終わると街を去った。
現在は帯広市内に在住し七十八歳で生活保護。
自力で経済活動ができず民生の管理下にある。
以上が美子に関する報告だった。
重蔵氏はこれらの報告をじっと聞き、最後に
「子どもは?」
と、聞いた。
「帰郷後すぐに堕ろしています」
と静馬氏が報告すると、しばらく途方を見つめ、両手で顔を拭い白くなった髪をかきあげ、
「嫌なことを頼んで済まなかった」
とだけ言った。
晩年、重蔵氏は心臓の具合が芳しくなくなり、体の不調を訴える頻度が高まってきた。自然と、飲み食いに出かける様子も無くなり始めた。とうとう、静馬氏へ社長の椅子を譲るも、会長職として残り、亡くなるまで、事実上の意思決定権と財産管理を静馬氏に託すことはしなかった。
何故か。
噂では、自分以外に知れては困る地所があり、そこに女性を住まわせていたとかいないとか。
そして、いよいよ自身に死期が遠くないことを悟って一番可愛がっていたお妾さんを逗子に転居させ、彼女には終生生活には困らせないように取り計らったとか。
妻の正子にその辺りのことが分からない訳はなく、
「私が黙っていることで家の人たちが平穏であれば一切黙っていましょう」
と、周囲の人には漏らしている。
正子はもともと病弱で一日寝て過ごす日もあるくらいなので、正子としてはそんな自分が重蔵を満足させられる自信がないとみて、重蔵氏の女性関係には穏便にしたかったのかもしれぬ。
しかし、正子を責められはしないが、この正子の判断があとになって大きな影を残すことになると、誰が予想出来たか。
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