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2. メールアドレス
ルシェルナ。
これは私があなたに紡ぐ物語。
聞いて、ルシェルナ。
この物語は……あなたが残した一つの『メールアドレス』から始まったの。
私の物語は、高校三年の春に始まった。私が『それ』に気付きだしたのは……『夢』への道に踏み込んで、引き返せないほどの頃だった。気づくにはあまりに遅く、引き返すにはあまりにも進みすぎた。
『夢』……それは私の未来。
長年想ってきたもの……とか、目指したもの……とか。そんなものではなくて、ちょっとした『興味』と『収入』。まぁ、面白くもないことを考えて目指した。半端だったと思う。
高校生になって、色んな人たちと触れあって……色々考えた。そんな中で芽生え始めた気持ちがあることを告げた。
「私の生きる意味って何?」
ある友達が泣いて語ったのだ。
「私は……勉強ができないなら生きている意味がない。だから、死のうと思った」……と。
私には理解できなくて、たったそれだけで『死』を考えるのかって。少しだけ、わがままな気がした。
友達がいて、家族がいて。『自分』を求め、励ましてくれる人がいる。一緒にいてくれて……
『生きて』……そういってくれる人がいる。その中で、前で。どうして『それ以外』が生きる意味にならないのか。
私は泣きたくなった。なら、私は何なんだろうって。私だって『大切な人達』ができた。でも……その人たちの『裏』には多分……私は映っていない。
贅沢なものを持っているのに、それを捨てようとする『友達』に私は少しイライラした。
私は何度も考える。『生きる意味』を。特別できることなんてありはしない。
趣味も人並み。
外見も人並み。
勉強は苦手な方。
運動は苦手。
明るい性格でもない。
何もない私の『生きる意味』って何?
私はただ生きている。
読みたい漫画や小説を『おこづかい』でかい、家族とたわいもない日々を過ごし。苦しい人間関係に揉まれ。勉強もそこそこ頑張り。
疲れはててベッドに息つく。
このまま、しばらく目を覚まさず寝ていたいと思うことも多々。
……そんな日々が幾度か繰り返された頃だった。一つの手紙とそれに書かれた『メールアドレス』が私に届いたのは。
手紙の差出人を見たとき……思い出したの。ルシェルナ……あなたのことを。あなたの『面影』を。
この日から私の『物語』が幕開けた。
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