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甦る記憶のあなた。
残念なことに、私は特定できるほど明確な姿は思い出せなかった。
甦るのは、ルシェルナが残した『言の葉』だけ。何故かそれ以外はぼやけて、霞んだようで……どんなに考えても、たどっても分からない。
ルシェルナ……あなたは『誰』?
一つのメールアドレス。
「ルシェルナ……R」
これ、あなただよね?ルシェルナ。
不思議なことに、始めてみるような『アドレス』じゃない。
私のスマホには、もともと『あるメールアドレス』が入っていた。誰のものか分からなくてそのままにしていたのだ。
「ルシェルナ……」
母は一度だけ口にしたことがある。
今は、仕事上海外に行っている母。何年か前の話になる。
「ん?メールアドレス?あぁ……」
私のスマホを買い、細かい設定をしてくれたのは母だった。
「あなたにとって大切な物よ」
「私?」
「えぇ。まぁ、怪しい物じゃないから入れときなさい。いつかきっと……分かるから。」
「……ふーん」
「プッあはは!ほんとに怪しくなんてないのよ?まぁ……そうねぇ。とりあえず取っといて見なさいな。大丈夫だから」
という感じ。あれから、特に気にすることもなく今日まで来たのだ。
「お母さん……」
きっと母は知ってるのだ。ルシェルナが『誰』なのか。私たちの関係も何もかも。
私はメールを開いた。
『こんにちは。オルシア……
君は私をを覚えてるかな。ずっと前のことだからもう……記憶には残ってないかも知れない。
オルシア……君はどんな風に美しく咲いたのだろう。
そして、今さらだけど許して欲しい。君を忘れてたわけじゃないんだ。やっと、戻ってこれた。
オルシア……君がいいなら、こうしてやり取りすることを許してほしい。
R 』
ルシェルナ……?
『オルシア』……何故か覚えのない言葉に懐かしさを感じる。昔……『誰か』にそう呼ばれていたような……
ルシェルナ……あなたなんだよね?
教えてよ。
霞がかった記憶。懐かしい呼び名。
あなたと私は『何』ですか?
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