2. メールアドレス

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甦る記憶のあなた。 残念なことに、私は特定できるほど明確な姿は思い出せなかった。 甦るのは、ルシェルナが残した『言の葉』だけ。何故かそれ以外はぼやけて、霞んだようで……どんなに考えても、たどっても分からない。 ルシェルナ……あなたは『誰』?  一つのメールアドレス。 「ルシェルナ……R」 これ、あなただよね?ルシェルナ。 不思議なことに、始めてみるような『アドレス』じゃない。  私のスマホには、もともと『あるメールアドレス』が入っていた。誰のものか分からなくてそのままにしていたのだ。 「ルシェルナ……」 母は一度だけ口にしたことがある。  今は、仕事上海外に行っている母。何年か前の話になる。 「ん?メールアドレス?あぁ……」 私のスマホを買い、細かい設定をしてくれたのは母だった。 「あなたにとって大切な物よ」 「私?」 「えぇ。まぁ、怪しい物じゃないから入れときなさい。いつかきっと……分かるから。」 「……ふーん」 「プッあはは!ほんとに怪しくなんてないのよ?まぁ……そうねぇ。とりあえず取っといて見なさいな。大丈夫だから」 という感じ。あれから、特に気にすることもなく今日まで来たのだ。 「お母さん……」 きっと母は知ってるのだ。ルシェルナが『誰』なのか。私たちの関係も何もかも。  私はメールを開いた。 『こんにちは。オルシア…… 君は私をを覚えてるかな。ずっと前のことだからもう……記憶には残ってないかも知れない。 オルシア……君はどんな風に美しく咲いたのだろう。 そして、今さらだけど許して欲しい。君を忘れてたわけじゃないんだ。やっと、戻ってこれた。 オルシア……君がいいなら、こうしてやり取りすることを許してほしい。                        R 』    ルシェルナ……? 『オルシア』……何故か覚えのない言葉に懐かしさを感じる。昔……『誰か』にそう呼ばれていたような…… ルシェルナ……あなたなんだよね? 教えてよ。 霞がかった記憶。懐かしい呼び名。 あなたと私は『何』ですか?
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