どこまでも脆弱な

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 『ライブハウス・DEN』今日のスケジュール。六時半から猫屋敷、ピーピーズ、さりさり、トモコ……と出演者がある中、清乃は猫屋敷に目が留まった。 『猫屋敷』は音楽教室の生徒達のバンドであった。以前、音楽教室の発表会の時に眉子の次に演奏した特徴的なバンド名を清乃は覚えていた。 清乃の気持ちは決まっていた。真実を突きとめたい。眉子のどこまでが嘘なのか。  ライブハウスに着き、入り口で千円を支払った。1ドリンク制だ。まだ開始前なので人もまばら。清乃はひどい喉の渇きを覚え、ビールをもらった。一気に飲み干してから、知っている顔がいないか周りを見渡した。 音響スタッフの男性を見たことがあると思ったが、開演前で忙しそうだったので後で声をかけることにした。  開演し、順に演奏が始まったが、清乃は何一つ耳に入って来ない気がした。全ての演奏が終わり、DJにバトンタッチされ、先ほど演奏していた人達も飲んでいた。猫屋敷のメンバーを見つけ、清乃は近づいた。 「すみません、あの、ちょっとお伺いしたいのですが」 清乃は、以前眉子と話していたのを見かけたことがある女性に声をかけた。 「え?はい、なーに?」 皮のライダースジャケットを着た化粧の濃いその女性は、くだけた感じの物言いだった。 「あの、山本眉子さんのことなんですが……」 いきなり話しかけてしまったが、清乃は何を聞けばいいのか躊躇した。
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