1:はじまりの日

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昨日の夜、青子が夕刊を取りに外に出たのは午後8時ごろだった。在宅勤務日だったので自宅で仕事をしていたが、出張前日だったこともあり丸1日、トイレ以外の歩行をまったくしていないぐらいの忙しさだった。午後4時過ぎに「コトン」と夕刊がポストに入る音を聞いたものの、取りに行く間も惜しかったのだ。新聞は読みたいのだが、「ここまで終わったら」の区切りがつかず、結局夜になってしまった。 暗闇の中でパソコンの光を頼りにキーボードをパタパタ鳴らし、いい加減電気をつけないとキーボードが打てないよ、というところで観念して1度手を止めた。何時間同じ姿勢だったのか分からない。猫背で固まった背中を伸ばしながら電気をつけ、トイレに行き、その足で玄関まで。小さな家をぐるりと一周し、玄関のドアを開けて新聞を取りに外にでた。 息を1つ大きく吐くと、息が一瞬にして真っ白になり視界を遮ったほどだ。今夜は氷点下になると数時間前にラジオの天気予報で聞いた気がする。 静かに新聞を抜き取って中に入ろうとすると、向いの角から特徴のある足音がした。緑が帰ってきたのだ。 「ただいま。今日は寒すぎて、背中のカイロの熱を全然感じないよ」 …… そんなことを話しながら2人で急いで家に入ったのをしっかり記憶している。昨日の段階でトラックが視界に入った憶えはない。 ===*===
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