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「錬金術…?」
お父様は大きくうなずいた。
「そうだ。フィオリトゥーラ学院には、優秀な錬金術の先生がいらっしゃると聞いている。その方についてしっかりと学べば、より高度な工作を行うための素材が錬成出来るようになる。そうしたらどこへ行ってもひっぱりだこ。上手いこと行けば億万長者も夢じゃない!」
お父様は大きく手を広げて高揚した様子で叫んだ。なんかやたら壮大な話に発展しちまったが、この提案ははマルコーにとっても魅力的だったらしい。
「高度な……工作。ぼく、やってみたいです。もっともっと、いろんなものをつくりたい」
浅黒い肌が興奮で朱く染まる。薄暗い部屋の中、キラキラと輝く瞳の光が際立って見えた。
「よし、そうと決まれば早速手配をしよう。お前はラウラより一年遅れで入学する事になるが、その間家庭教師をつけてみっちりと勉強を教えてもらうからな。心して学べよ」
「はいっ。ぼく、がんばります」
「よし、良い子だ」
お父様が笑ってマルコーの頭にぽんと手を置いた。マルコーははにかんだ笑顔を浮かべてうなずく。
(よかった…!ほんっとーーーに、よがっだああああ)
疎遠だった父と子が心を通わせた瞬間。そして不憫だったマルコーに明るい未来への道筋が見えた瞬間。
これが涙せずにはいられないだろっ…!
「マルゴォ…よがっだわね…ずびびび」
いかん、美少女にあるまじき不細工な泣き声をあげてしまった。鼻水ズビズヒだし最悪だ。
でも、そんなこと構ってられないくらい感動しちまったんだよおおお
しょうがねえだろおおおお
年食うと涙もろくなるんだよおおお
加齢なんだよ許せようぅおおお
「ふぐっ、うっ、う゛え゛え゛……ふごお」
(あー涙止まらねえ! 全然美しくねーし!)
これじゃ陵辱エロゲーで鼻フックされてフガフガ言ってる美少女しか想像できねえ!
いやそれはそれでエッチだけども!!
豚みたいに鼻を鳴らして泣く俺の前に、お父様がしゃがみ込む。
「ありがとう、ラウラ。お前のおかげで俺は過ちに気づけた。美しいだけでなく、とても聡明な子に育ってくれて誇らしいよ」
「お父……様」
「これからもマルコーをよろしく頼む」
俺の肩に、お父様のがっしりと大きな手が載せられる。
その温かみを感じた瞬間――
ぽろっと、真珠のような美しい涙が一粒こぼれた。
それは、さっきまでむせび泣いていた俺の感情とは異質なもので。
(ああ、そうか。これはラウラたんの流した涙だ)
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