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よし、質問を変えよう。抽象的なのがよくないんだよな。もっとマルコーが答えやすい聞き方をしないと。
「朝食のときの様子とか、いつもいるお部屋の様子とか、そういうのをお父様に教えてあげてほしいの。もっとこうなれば暮らしやすいのに、と思ってること、あるでしょう?」
「ぼくは、ここでお世話になっているだけでとてもありがたいので……今住んでるお部屋も、誰も来なくて好きなだけ工作が出来るので、気に入っています」
「ん? お前この部屋で工作してるのか?」
「い、いえ。離れに、ぼくの部屋がある、ので…」
「離れ? あんなところにか?」
お父様は怪訝そうな顔になった。
(よっしゃ、でかしたぞマルコー!)
これはマルコーの口から言って貰わないと意味がなかったからな。
俺が言うのは簡単だが、やっぱり本人から告げるのが一番信憑性が増す。
あの部屋に連れていけば一目瞭然。マルコーがどんな酷い状況に置かれているかお父様にも理解してもらえるはず。
ここは俺のキメ顔で、不穏な流れを作っておかねえとな。
俺はキリッと厳しく顔を引き締め、お父様へ向き直った。
「お父様……この部屋はマルコーの本当の部屋ではないのです。お父様や来訪したお客様の目をごまかすために用意された偽りの部屋。マルコーは普段、離れのカビ臭い部屋で使用人もつけて貰えず、孤独に暮らしているのです」
お父様の顔色が変わった。
「……それは本当なのか、マルコー」
マルコーはこっくりとうなずいた。
「で、でもぼくは十分良くしていただいています。一人の方が工作を邪魔されなくて集中できますし、雨風をしのげるだけでもありがたいので……」
お父様の眉根がみるみる下がって情けない顔になる。完全にかわいそうな子を見る目つきしてるし。
マルコーの「良くしていただいてる」アピールから、お母さまの彼に対する仕打ちを悟ったのだろう。
(GJだぞ、マルコー!)
心の中でぐっと親指を立てる。
あの部屋に案内する準備は整った。さあ、ここからが本番だ!
ニヤけそうな顔を引き締め、思い詰めた顔をつくる。ここで気を緩めたらおしまいだ。トコトン陰鬱に、緊迫した空気を醸し出さないと。
「お父様……これから離れへ参りましょう。普段マルコーがどんな暮らしをしているか、その目で確かめてほしいのです」
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