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「さようならじゃねぇよ。俺だって会いたかったよ。」
堪え切れず涙が溢れてくる。震える手に朱莉の手が重なる。温かくて優しくて晶の手みたいだ。
朱莉の後ろ、ぼやける視界の中に柊平が映った。
「柊平……俺に言いたい事があるならはっきり言え。ずっと言いたかった事があるんだろう? ちゃんと聞くから。笑ったりごまかしたりしないから。その後で晶の話をしよう。おまえと晶が俺の話をしてくれていたみたいに。」
黙ったまま小さく頷いた柊平の肩は震えていた。
朱莉のもう片方の手が柊平の手を掴む。
朱莉を真ん中にして俺と柊平は繋がった。
なぁ、晶。もしもおまえがここに居たらきっと朱莉と同じ事をしたんだろうな。あの初詣の時みたいに。
それからごめん。俺も嘘をついていた。
本当は薄々気付いてた。柊平の想いに。
言えなかったのは俺も同じだ。
俺たちはみんな嘘つきだった。
離れたくなくて、傷付けたくなくて、大切にしたくて。ただそれだけで、それ以外は何もなかった。
不器用で臆病な所は3人とも同じだったみたいだ。
だからこれからもずっと見ていて。見守っていて。
また優しい嘘が増えてしまわないように。
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