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その日から俺たちはすぐに仲良くなった。毎日たわいもない話で大笑いする俺と晶を優しく見つめる柊平がいて、俺たちは良いバランスで成り立っていた。
その年の冬には俺と晶は恋人関係になり、柊平とは親友と呼べる程親しくなっていた。
俺たちはいつも3人一緒だった。その事に何の疑問も持っていなかった。けれど年明けに行った初詣で、人混みの中ではぐれるといけないからと理由を付けて初めて晶の手を繋いだ時、ドキドキしながら隣の晶を見たら、晶はもう片方の手で柊平の手を繋いでいた。その時、胸の奥から不安が込み上げてくるのを感じた。
「お邪魔しまーす。柊平は? てか部屋汚過ぎ!」
「来ないよ。」
「え?」
「柊平なら来ないよ。」
「どうして?」
背を向けたまま、床に散らばった雑誌を拾い上げる晶を後ろから抱き締めた。突然の行動に晶は身体をびくっと震わせ、驚いた顔で俺の顔を見やった。俺はそのまま顔を近付けた。
「ごめん!」
「いや俺の方こそごめん! いきなりとかびっくりするよな。本当ごめん。」
勢い任せにキスしようとしたら持っていた雑誌でガードされた。照れ隠しとかそんな事ではなく間違いなく拒否された。
そりゃそうだ。急過ぎた。焦り過ぎた。
「付き合ってるんだしキスくらい普通じゃないの?」
その日の夜、柊平は電話越しにあっさりとそう言った。
「ショック受けてんのに追い打ちかけんなよ! あーどうしよう……」
「晶はその後どうしたの? 帰ったの?」
「うん。嫌われたかな俺……なぁ柊平、晶にフォロー入れといてよ。」
「2人の事だろ? 俺を間に挟まないで2人で話した方がいいと思うよ。」
柊平との電話の後、天井を見つめながら溜息を吐いた。
せっかく柊平に協力してもらって2人きりになれたのに、晶を怖がらせてしまった。
「何やってんだ俺……」
晶の事が好き過ぎて上手く言葉にも行動にも表せない。
どうしていいのかわからないんだ。
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