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それから数ヶ月、晶と初めてキスをしたのは俺の誕生日の日だった。
「洸ちゃん本当にプレゼント要らないの? 後から言ってもダメだからね? 言うなら今だよ!」
「じゃぁ……」
ぼそっと呟いた俺に晶は「何? 何?」と好奇心に満ちた瞳を向けた。俺は緊張でガチガチに固まっている身体をほぐそうと小さく息を吐き、思い切って口を開いた。
「晶とのキス。」
「それ……ものじゃないじゃん。」
「ごめん、忘れて。」
「目閉じて。」
「へっ?」
力強い口調の晶に圧倒された俺は思わず情けない声を上げてしまった。
「早く!」
「お、おう……」
晶に急かされぎゅっと目を閉じる。心臓が煩く響く中、晶の匂いと柔らかな感触を感じて、俺はただ身を委ねていた。きっと一瞬だったに違いないその感触はいつまで経っても俺の唇に熱を残していた。
「お誕生日おめでとう。大好きだよ。」
「ありがと……」
目を開けると、そこには俺を見つめる晶が居て。俺はもう夢見心地でフワフワした気分に包まれていた。多分ちょっとくらい浮いていたと思う。それくらい晶とのキスは衝撃的で幸せな出来事だった。あの時以来2人きりを避けられているような気がしていた。不安だった。苦しかった。だけどもうそんな事は全部忘れた。
その夜、俺はすぐさま柊平に電話をかけた。
「そんなのわざわざ報告してくれなくていいよ。でもまぁ、よかったね。」
俺の興奮をよそに柊平は思った以上にあっさりとしていた。けれどその時の俺にはどんな言葉でも嬉しかった。
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