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「俺と晶は同性しか愛せないんだ。」
その言葉に思わず絶句した。思いもよらない答えだった。途端に心臓が慌ただしく音を立て頭の中がぐるぐると混乱して回る。
「ちょっと待てよ、同性しかって……」
「俺は男しか愛せないし、晶は女しか愛せない。」
「いや、だって晶は俺の事好きだって……俺たち2年以上も付き合ってたんだぞ? そんな事って……」
「でも身体の関係はなかったろ? 晶は凄く苦しんでた。洸平の事は大好きだけど身体は受け入れてくれないって。早く言わなきゃいけない。ずっとそう思ってたって。」
ー10年前の帰り道ー
「洸平と何かあった?」
「全部私が悪いの。男だっていうだけで洸平の事を受け入れられない私が悪い。こんなに好きなのに、傷付けたくないのに。私男に生まれたらよかった。そうすれば柊ちゃんみたいに親友としてずっと側に居られたのに。」
「そう。俺はずっと晶が羨ましかったよ。俺は晶になりたかった。」
「え……」
俺と晶は同性しか愛せない。
晶は親友のように、俺は恋人のように洸平の側に居たかった。
「ごめん。私全然気付かなかった。ずっと柊ちゃんの事も傷付けていたんだね。最低だこんな嘘……私洸平にちゃんと話すよ。」
「無理して言わなくてもいいよ。俺は今まで通り側に居られたらそれでいい。晶には感謝してるんだ。晶のおかげで俺は洸平と親友になれたから。」
「柊ちゃん……」
晶は目に涙を溜めて、小さな声でありがとうと言った。
真実を言う事が必ずしも正しいとは思わない。
けれど晶はずっと苦しむ事になった。何も言わずに洸平に別れを告げた事をずっと後悔していた。
「柊ちゃん、私と結婚してくれない?」
大学を卒業する頃、晶は突然そんな事を言い出した。驚いたけれど俺はすぐにいいよと答えた。何故だかわからないけれど晶とはとても波長が合う。全てを話さなくても気持ちが通じ合うようなそんな相手だった。
俺たちはいつも洸平の話をしていた。けれど会いたいとは言わなかった。もう会えない事を、会ってはいけない事をわかっていたから。
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