気になるのは車か、それとも…

4/7
前へ
/319ページ
次へ
「――――な~・・美律ぃ・・・いつまでここでこーやってんの~?」 日曜日の午前7時。つい1時間程前まで一緒に飲んでいた友人の羽田悠<ハネダ ユウ>を引き連れ、美律は自分の働く店の向かいにある駐車場のコンクリート塀に寄り掛かり、まだ高級外車の停まらないいつもの定位置をじっと睨み付けるように見つめていた。 「・・・カレラがここに来るまで」 面倒くさそうに美律は答え、再び唇を引き結び難しい表情でビル前の一角に視線を戻す。 はぁ・・と大きく溜息を吐いて羽田はその場にしゃがみ込み、「美律は変なとこで頑固だよな」と諦めたように呟いた。 「―――オーナーだったら・・・、忠告してやる。一度シルクに来た方がいい、って」 美律と羽田は小学低学年からの付き合いだ。 羽田の両親はこの街で居酒屋を経営していたため、他の同級生たちよりもその関わりは深く濃かった。帰りの遅い羽田の両親が迎えに来るまで美律の家やシルクで待ったり、食事も風呂も済ませてふたりで寝てしまう、なんていうことも多々あった。 子供の頃からこの街をよく知る羽田も街のルールは当然知っていた。美律が危惧している理由がよくわかるから、無理やりこの場から連れ帰ることができないでいるのだ。
/319ページ

最初のコメントを投稿しよう!

954人が本棚に入れています
本棚に追加