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「大丈夫だって。今まで何もなかったんだし、誰も丈治さんを恨んだりしてないって。―――そんな心配しなくても、丈治さんが美律の傍からいなくなるなんてありえない」
「・・・そんなの、絶対とは言い切れないだろ。――――それに・・・あんな高そうな車に乗ってる成金野郎を、俺は絶対にこの目で見てやるって決めたんだ!」
そっちかよ!と心の中でだけ突っ込んで、羽田は温い苦笑を浮かべ、「気が済むまで付き合ってやるよ」と、本格的にその場に胡坐を掻いて座り込んだのだった。
それから30分後。待ちに待った例の車――ポルシェ911カレラ――が、颯爽と目の前の定位置へと滑り込んできた。
「―――来た・・」
独り言のように美律はそう言って、羽田の制止を聞くことなく一目散に車へ駆け出す。
美律が運転席のドアから顔を出した人物に「・・あの」と声をかけると、相手は訝しげに眉を顰め、無言で首だけを傾げた。
「――このビルの関係者の方ですか?」
唐突に声をかけてきた美律を少しの間観察するようにじっと見て、相手は「――まぁ、そうなる予定」、とだけ答えた。
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