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けれど表情には出さないよう、美律は小さく頷きそのまま顔を俯けた。
「―――だが。それは俺にとって何の不都合にも、ましてこうなったこと解消する理由にも成り得ない」
響尾の指先が俯いた美律の顎を掬い持ち上げて、至近距離でしっかりと視線を絡ませた。
「――――何も知らないという事は、お前を俺好みの恋人にできるってことだろう?」
「・・・ぇ」
返ってきた言葉が予想外過ぎて、美律はポカンと口を開けたまま目の前の響尾を不思議そうに見た。
響尾はそんな美律を面白そうに見つめ、前触れなくほんの軽いくちづけをして、その体をぎゅっと抱きしめる。
「――――残念だったな、美律。お前はもう俺から逃げられねぇぞ。諦めろ」
「・・・慣れねぇ」
「まぁそう構えるな。心配しなくてもあっという間に手懐けてやるから。―――お前もそういう意味ではちょっとした野良だよな。エサくれる相手にはある程度近付くけど、用が済んだらプイ、みてぇな?」
「・・・ひどっ。そんなことないし」
「まぁそういうの嫌いじゃねぇよ、俺は。―――――つーかさ、俺もう少し寝てぇんだけど」
「あ・・、今何時?帰るよ」
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