野良は天敵

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チンピラだってそんな悪趣味なのは着ないだろうな、と思ってしまうような、上下とも蛍光色のきつい黄色のジャージ。おまけに足元は雪駄だ。――――――とにかくダサい・・・ダサすぎる。大体なんでこんなのがじいちゃんと知り合いなんだ?今までそれなりにたくさんの祖父の知合いや昔馴染みの人達に会わせてもらったが、こんな小汚い風貌の人間は一人もいなかったのに・・・。などと、そんなことを考えているとは全くわからない涼しげな顔で、美律は手元の氷を黙々と削り続けていた。 「――――ギブソン」 前置きも何もなく、男は心地好い甘さの混じる低い声で、目の前に立つ美律を真っ直ぐ見つめ、言った。 美律はそれに対し特に驚くでも慌てるでもなく投げられた視線を受け止め、薄く笑みを浮かべると、「・・畏まりました」、と答えた。 平静を装い、美律は必要な材料を準備する。しかし、見た目に反して心臓はどくんと大きく揺れていた。 表面上しか見ていなかった男を真正面からしっかり捉えると、それはもう驚くほど整った精悍な顔立ちをしていたことに気付いてしまったのだ。
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