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静かにゆっくりと飲む客もいれば、丈治や美律との会話を楽しみにやって来る客もいる。
最近では美律目当てに通い詰める客も現れ、店の雰囲気がその時の客層でガラリと変わるという、丈治が一人で店をやっていた時にはなかった現象まで起きている。
だからといって『シルク』の質が落ちることはなかった。
相変わらず丈治は慕われていたし、美律は可愛がられている。
何も変わらない日常。変えたくない日常。
カウンターでシェイカーを振り、訪れる客と会話を楽しみ・・・、気の合う相手と時折肌を重ねる。
美律はそれが自分の生き方だと思っていた。幸せだと思っていた。―――――あの男に出会うまで・・・。
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