気になるのは車か、それとも…

3/7
前へ
/319ページ
次へ
いつか・・・、自分にとってただひとりの肉親である祖父が、謂われのない事で苦しめられる日が来るのではないか。危険な目に遭ったりはしないだろうか。―――今度こそ、自分はひとりぼっちになってしまうのではないだろうか――――――。美律はそんな不安に押し潰されそうになる。 だからこそ、隣に建ったビルが気になっていた。 高級外車が毎日停まっているのも目を惹いたし、自分の知らないうちに人の出入りがあるだろうとはわかっていた。それなのに、立地が隣というにも拘らず、まだ一度もオーナーは顔を出していないということが、美律に堪らない焦燥感を与えている。 ―――早くじいちゃんのとこに顔出してくれればいいのに・・・。そうしたら、じいちゃんを恨む人が生まれなくて済む。―――――俺は・・・一人になる寂しさを、もう味わいたくなんてないから――― 美律が丈治に車の話をしたのは、あくまでも話のとっかかりのはずだった。 だから、後日起こした行動により、長く自分自身を悩ませる事になるとは想像もしていなかった。
/319ページ

最初のコメントを投稿しよう!

954人が本棚に入れています
本棚に追加