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いつか・・・、自分にとってただひとりの肉親である祖父が、謂われのない事で苦しめられる日が来るのではないか。危険な目に遭ったりはしないだろうか。―――今度こそ、自分はひとりぼっちになってしまうのではないだろうか――――――。美律はそんな不安に押し潰されそうになる。
だからこそ、隣に建ったビルが気になっていた。
高級外車が毎日停まっているのも目を惹いたし、自分の知らないうちに人の出入りがあるだろうとはわかっていた。それなのに、立地が隣というにも拘らず、まだ一度もオーナーは顔を出していないということが、美律に堪らない焦燥感を与えている。
―――早くじいちゃんのとこに顔出してくれればいいのに・・・。そうしたら、じいちゃんを恨む人が生まれなくて済む。―――――俺は・・・一人になる寂しさを、もう味わいたくなんてないから―――
美律が丈治に車の話をしたのは、あくまでも話のとっかかりのはずだった。
だから、後日起こした行動により、長く自分自身を悩ませる事になるとは想像もしていなかった。
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