命の花

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僕の名前は『壮志(そうし)』、4年制の大学を卒業して旅行会社に勤める27歳の平凡な男性会社員だ。 僕には同じ年の『柊月(ひづき)』という小学校からの幼なじみで大学2年生の頃からお付き合いしている彼女がいる。 僕は柊月と結婚しようと思っていて、柊月とは東京都内の賃貸マンションで結婚を前提に同棲生活を送っている。 僕達地球上の人間は、1人に1つ『命の花』という鉢植えの1本の花を持っていて、この花は生まれた頃から咲き続けている。 この花が枯れると同時に、僕達人間は死を迎えることになる。 だから僕達人間は、この花が枯れないように毎日細心の注意を払っている。 しかし柊月のこの花が3ヶ月前から原因不明で枯れかかっていて、それと同時に柊月も3ヶ月前から原因不明の病気になって病院に入院していて意識が戻らない状態となっている。 僕はこの柊月の命の花を何とか元のように咲かせたいと思って、毎日柊月の入院している病院に通って花に水を与えているけれど一向に花が咲く気配はない。 僕は毎日インターネットで枯れかかった命の花を咲かせるための方法を調べているけれど、これといった良い方法が見つからない状態が続いている。 そんなある日の夜、仕事を終えて自宅に帰ると大学時代の友人である『理玖(りく)』から僕のスマートフォンに電話が入った。 「壮志、柊月ちゃんのことで役に立てるかもと思って電話したんだよ!」 理玖は僕にとって頼りになる友達で、僕が困っていると親身になって相談に乗ってくれて、いつもいろいろ助けてもらっている。 僕は柊月のことを理玖に話していて、心配して電話をかけてきてくれたようだ。 「前にも話したことがあると思うけど、ぼくのお爺ちゃんは考古学者で、以前そのお爺ちゃんから教えてもらったことで記憶に残っていることがあったんだ。  それは『奇跡の泉』から湧き出る水の話で、その水を命の花に与えると難病の人が奇跡的に助かるという話なんだよ!」 理玖の話は夢のような話で現実的ではないと思ったけれど、あまりにも理玖が真剣に話をするので、僕はこの話を真剣に聞くことにした。 「僕がそのことを思い出してお爺ちゃんに聞いてみたら、今度詳しく話すから家に来るように言われたんだよ!  僕は行ってみようと思っているんだけど、壮志も一緒に話を聞きに行かないかと思って…」 理玖の口調から理玖自身も半信半疑なんだろうと感じたけれど、今の僕は柊月を助けたい一心で藁にもすがりたい思いだから、僕も一緒に行って話を聞いてみようと考えた。 「理玖、柊月のことを心配してくれてありがとう!  ぜひ僕も理玖のお爺さんに会わせてもらおうと思っているよ!」 僕は自分の正直な気持ちを理玖に伝えた。
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