命の花

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久しぶりに実家に帰って自分の部屋に入ると、小学校から高校までの柊月との楽しい思い出がよみがえってきた。 そして今後自分はどうしようかと考えた。 理玖のお爺さんは嘘をつくような人には思えないから、理玖のお爺さんの言葉を信じてギリシャに行くことを考えていた。 翌日僕は実家を出て東京の自宅に戻って、さらにその翌日の月曜日にいつも通り会社に出勤すると、僕はさっそく上司に事情を話してまとまった休暇を取得することにした。 旅行会社に勤めている僕は、ギリシャに行くための旅券や宿泊するホテルの予約などを行った。 ギリシャへの直行便はないため、翌週末土曜日の早朝に成田空港を飛び立った僕は、約13時間をかけてまずはイタリアのローマに到着した。 ここで1泊して飛行機を乗り継いで翌朝イタリアのローマを飛び立って、約3時間をかけてギリシャのアテネに到着した。 オリンポス山はテッサリア地方にあるため、アテネからは鉄道でカランバカに向かい、ここで宿泊することにしている。 アテネに到着したのはお昼頃だったため、昼食を済ませてから鉄道に乗って、約5時間をかけてカランバカに到着しホテルにチェックインした。 ホテルで1泊して翌朝専用車で、約4時間かけてオリンポス山登山口のプリオニアへ向かった。 僕はここで現地の案内所の案内人に洞窟の話を聞くことができた。 理玖のお爺さんから聞いた洞窟は、ここから歩いて1時間程の場所にあるということだが、案内人は行っても無駄だという話をしてくれた。 案内人は奇跡の泉のことを知っていたけれど、奇跡の泉を見たものは誰もいないという話だった。 案内人にお礼を言って、僕は案内人から渡された地図を頼りに洞窟に向かった。 1時間程歩いただろうか、洞窟らしき入り口を発見した。 しかしその入り口の前には1人の若い女性が立っていて、入り口をじっと見つめていた。 そのうちその女性は僕の存在に気が付いたようなので、僕は英語で話しかけてみると、その女性は日本人だということがわかった。 僕は日本語で、 「この洞窟に入るのですか?」 と聞くとその女性は、 「はい、奇跡の泉を探しています。」 と話してくれた。 その女性はとても若くて17歳の『莉生(りお)』さんという女性だった。 どうやら母親が原因不明の病気で、何とか助けたくてここに来たという話だったが、洞窟に入るのが少し怖くて躊躇していたようだった。 僕も恋人の柊月の病気のことを話して、 「一緒に入りましょうか?」 と声をかけると、莉生さんは少しほっとしたのか、 「はい、よろしくお願いします。」 と少し笑顔で返事をしてくれた。
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