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「何かあったのか?様子が少し変だが…」
「…別に何でもないですよ。」
家に帰ると、知亜希にいつもの笑顔が無い。
どうしたんだと聞いても何でも無いの1点張りで、俺が酒に酔っているせいだと言う。
俺の顔が赤いのは酒のせいだけではなく、恐らくさっきまで怒りで興奮していたのもあるだろう。
それに俺は酔う程飲んではいない。
明らかに様子がおかしいが、本人に話す気が無いのなら今聞き出すのは難しいだろう。
だが、これで早急に調べる必要が出てきた。
もしも原因があの女であれば、俺は絶対に許すわけにはいかない。
部屋に戻るとすぐに、先程別れたばかりの慎也に電話をかける。
「もしもし。どうかしたのか?」
「慎也、例の噂の出処とあの女について早急に調べる必要が出てきた。」
「どうしたんだ急に。何かあったのか?」
「知亜希の様子がおかしい。」
「…は?」
「何かを隠しているようなんだ。もしかしたらあの女が既に何か行動していたのかもしれない。」
「…契約で結婚した旦那になら、隠し事の1つや2つあるだろ。」
「笑顔も無かったんだぞ。」
「女は気分屋だから笑顔ぐらい無いことだって…」
「慎也。」
「あ~…はいはい。分かったよ。調べればいいんだろ。ったく…お前がここまで女に入れ込む日が来るとは思わなかったわ。」
「…お前にもいつかそう思える相手が現れる。」
「俺はいいわ。女に本気になった事とかねーし、面倒そうだ。」
その言い方に、何処か憂いを感じる。
慎也との電話を切りベッドに横になると、思った以上に疲れていたのかすぐに瞼が重くなってくる。
シャワーは朝にした方が良さそうだ。
…知亜希の事は、絶対に俺が守る。
その為にも、きちんと調べなくては。
まさか原因が自分にあるとも気付かずに、人生で一番最悪だった誕生日が幕を閉じた。
ーーーENDーーー
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