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番外編:Un happy birthday-和暁side story-
「あの…和暁さん。今日って遅くなりますか?」
朝出かける前、知亜希からそう聞かれた時に俺は少しだけ期待した。
今日は俺の誕生日。
もしかしたら、彼女はお祝いでもしてくれるつもりなのだろうか。
「行ってくる。」
いつもと同じに聞こえるように努めて冷静に出かけはしたが、少し顔が緩んでいたような気がする。
いや…でも待て。
彼女は果たして俺の誕生日を知っているのだろうか。
当然俺から伝えたことは無い。
「社長、どうかされましたか?」
「何がだ?」
「さっきから顔が百面相ですよ。嬉しそうにしてみたり、難しそうな顔をしてみたり。」
…まだ見られたのがこいつなのは救いだったな。
「その様子だと、ちゃんと聞いていらっしゃらなかったようですね。」
「…すまない。」
「ではもう1度。本日の予定に1つ追加があります。」
「追加?」
「はい。今夜開催されるパーティーの招待が来ています。」
「パーティー?こんな当日にそんなもの招待されないだろう。」
「社長のバースデーパーティだそうです。サプライズの。」
それを聞いて、心の中で舌打ちをした。
「断れ。俺は新婚だぞ。普通は当日なんて遠慮するもんだろう。」
「私もそう思います。ですが取引先も招待されているようで、すでに参加の返事を貰っていると。」
取引先まで招待されているのなら、行かないわけにはいかないだろうな。
…嫌がらせか何かか?
「それと…1つ社長の耳に入れておきたい事が。」
「何だ。」
「最近、社長の結婚は偽装ではないかという噂が社内に流れているようです。」
結城の言葉に、俺の頭は一瞬真っ白になった。
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